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love affair? (4) [12.08.23.]


 こういう表情すると、幼くなるというか、年齢相応になるなあと思う。
 思うが。

「オイコラ、何時までもアホ面してんじゃねえよ」
「……意外性の塊だな」
「俺がタチなのがそんなに意外か?」
「いや」
「じゃあなんだ。ったくよお、どいつもこいつも人をネコだと決めてかかりやがって」

 グビグビッと呑むと、だんだん目がすわってきた。

「そりゃあ俺ほどの金髪碧眼ナイスバディな色男だからな、俺を抱きてえって奴がいるのは分かる。分かるけどよぉ、俺に抱かれてえって奴に会ったことねえのは納得いかねえ! そうだろ!?」

 そうでもねえよと言いかけて止めた。既に泥酔手前の状態。余計なことは言わない方がよさそうだ。

「まあ、確かに中身は」
「そうだろお。さすがだ、腹巻き剣士は伊達じゃねえなあ」
「タチなのは意外でもねえが、その好みがな」
「後背位?」
「違え!」
「あー、筋肉?」
「おう。連れていた男はタチだろう?」
「そうだ」

 酒を飲み、ニヤリと笑うと、驚く程に色気を纏った視線。

「なあなあ、そんな仏頂面でストイックにも見えるマッチョマンはどうやって相手を口説くんだ?」
「口説く?」
「おう」
「誰を?」
「一夜のお相手」
「なんで?」
「……てめえ、自分で声掛けたことは?」
「ねえな」
「来る者拒まずか。さすが魔獣」
「そんなこともねえ」
「毬藻の癖に選ぶのかよ」
「どっちだ!」
「ん〜どっちにしても気に入らねえ」

 剣呑な表情をしたかと思うと、にやんとまた笑いながら言った。

「駆け引きの醍醐味を知らねえとは、なんて可哀想な腹巻なんだろうなあ、なあ?」
「いや、別に」
「いや、別に、だあ!?」

 しまったと苦々しい顔をするが、既に遅かった。

「てめえは体目的か! まあそりゃそうだが、仮にも一晩、場合によっちゃあ二晩三晩とベッドを共にするんだぜ。体だけじゃなくて心から気持ちよくなるにはコミュニケーションが大事だろうが」

 ただでさえ回る口は、酒が入ると更に饒舌になるらしい。

「俺が好きな筋肉は大抵タチだから、コレ!ってのを見つけたら、もうそこから勝負は始まるわけだ。ヤツらは当たり前だがネコを探しに来てやがるから、そういうヤツらを趣旨替えする気にさせなきゃならねえ。本来ならレディの美辞麗句の為だけに発揮したい口説きのテクニックをご披露ってわけだ。聞いてるか!? なあ、ま〜り〜も〜」
「ぐ」

 話の途中からまた背を向けて飲んでいたゾロを、後ろ側から羽交い締めにする。
 だから、気付いた。

「おい」
「なんだ」
「俺にその気はねえ」
「ああ!? あったりめーだ、俺様に藻に突っ込む趣味はねーよ」
「勃ってんじゃねえか」
「へ? あー、ホントだ。まあ仕方ねーよ。こんだけ色っぺー話してたらよー。おまけに理想に触れちまったからなー。なあなあ、もういっぺん触っていーか? なあなあ、マ〜リモ〜」

羽交い締めのまま揺さぶるもんだから、苦しいったらない。

「放しやがれ! 触るも何も、のしかかってんじゃねえか!」
「え、乗っていいのか?」
「アホか!!」

 嘘に決まってんだろばーかばーかと歌うように言いながら、漸く離れた。
 酔っ払いが。さっさと潰してしまうか。
 また酒を煽ると、そっと背中に触れられた。
 無言のまま、本当にそうっと。右手の中指の先から順に触れ、掌全体で背中に触れた。そして、巻き戻すような動きでまた静かに離していく。
 何なんだと視線をやると、憧憬を孕んだ真摯な視線で背中を見つめていた。
 またビビッときた。
 何だと考えるより先に、その瞳が閉じられ、軽く眉間に力が入れられた。

「あ、やべえ」
「あ?」
「どうすっかな」
「何だ?」
「仕方ねえか」
「だから何だ?」
「おら、こっち向け」

 いきなり仰向けに押し倒された。

「何しやがる!」
「ヤるはずだったんだから、溜まってんだよな。この前の島から結構あったしよ−」
「突っ込まれる気はねえぞ」
「あったり前だ。けどよ、気持ちいいほうがいいだろ?」
「だったら何だ」
「抜いてやるよ」
「あ?」
「テメエでやるより他人の方が気持ちいいだろう?」
「そうとも限らねえが」
「ああ!?」

 しまった。ついいつもの調子で返してしまったと、珍しく後悔までする。
 が。
 サンジの行動の方が速かった。
 腹巻きを捲り上げるのを察知して起き上がろうとするも、胸に手を付かれて押さえ込まれ、もう一方の手が素早くズボンの中に突っ込まれた。

「っ!」
「期待を裏切らねえモン持ってやがるな、ムカツク」
「ムカツクんなら離しやがれ!!」
「やなこった」

 話しながら刺激を与えることは止めない。

「ほら」

 気持ちよくなってきたろ? と、誘うようににやりと笑った。
 挑発に乗るのも悔しいが、それはそれで売られた喧嘩を買わないような気になってしまった。
 サンジの手に握られたまま、自ら前を寛げる。
 お、と、子供のような邪気のない楽しげな表情が、行動と実にアンバランスだ。それにまたまたビビビッと何かが走った。
 チッと舌打ちをしてから、ゾロはサンジのベルトへ手を伸ばした。

「なに、してくれんの?」
「してもらいてえんじゃねえのかよ」
「俺様のテクに自信喪失しちまうぜ?」
「言ってろ、アホコックが」

 いつもの勝負に淫靡さが混じった、なんとも奇妙な気配が部屋に満ちていった。


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