love affair? (3) [12.05.03.]
「筋肉がついているとはいえ、骨格的に細えだろ、俺。だからか、がっしりした体格に惚れ惚れしちまう訳だ。レディが好んでくれるスレンダーボディなのに。ごめんね、女神達ー!!」
また芝居がかるが、再度スルー。
「レディの、それこそ至高のボディも素晴らしいし、大好きだ。神々しいことこの上ねえ。触りたくもなるし、実際触れさせていただいた時には、震えがくるくれえメロメロだせ」
グビッと一口。
「でも、そういう風にはならねえんだよなー。何でだ?」
「知るか」
「んだよ、張り合いねえな。で? 毬藻はどんなのがお好みなんだ?」
「別に。触られりゃ勃つしな」
「最低だな」
「男なんて、そんなもんだろ」
新たな酒に手を伸ばそうとして、明らかに落ち込んだサンジの姿が目に入る。あ、そうか。
「悪い」
「いや、事実だから仕方ねえ。その事実故に、俺は自分の性癖を自覚したわけだからな。分かるか? こーんなにレディを愛しているのに、レディを愛せない体を持つ不幸な苦しみ!!」
またまた芝居がかるが、だんだん派手になってるような気さえする。アホだ。
「ま、テメエに分かるわけねえか。このレディの敵! でもって、野郎の敵!」
「なんだ、それは」
「そうだろうが。選り取り見取りなんだろうが。こーんないい体してりゃよお」
ほれ、見せてみろ、筋肉ーと言いながら、ゾロのシャツを捲り上げた。
「何しやがる!」
「いいじゃねえか。普段から露出狂なんだからよ」
「俺は変態じゃねえ!」
「本当にムカつくくれえいい体してるよなー」
ペタペタと割れた腹筋に触る。そのなんとも無邪気な様子に、毒気が抜けてしまう。いいなーとか、そんなことを呟きながら、またペタリと触る。
「なあなあ、こんなチャンス、なかなかねえからさ、背中、触ってもいいか?」
酔っ払いが、それこそ子供が様子を伺うような視線で聞いてきた。
何か、ピピッと来た。
なんだ?
……まあいいか。
「構わねえよ」
「いいのか?」
物凄く驚かれて、それに驚いた。
「別に、触るくれえ大したことねえだろ」
「背中だぞ」
「ああ」
自分から言い出したくせに、何を躊躇してるんだと思いながら、ゾロは自らシャツを脱ぎ捨てた。そして、片足をベッドに乗せ、背中をサンジに向けた。
「う、わ……」
感嘆の溜め息のような声に、くくっと笑ってしまう。
「今更だろうが。それこそ毎日見てるだろ」
「無防備に晒していいのかよ」
「何言ってやがる」
またおかしくて笑うと、筋肉も綺麗に動いた。
「本当にすげえな」
その台詞と口調と、そうっと触れてきた冷たい指先がくすぐったい。背中も、胸の奥も。
「こんな綺麗な体、どれだけ艶めかしく動くんだか」
何か引っ掛かった。
「矜持を背負った背中に言うことじゃねえな。さすがに背徳過ぎる」
これくらい綺麗な背中の軽い男いねえかなあとか独り言のように呟きながら、酒を呑む。
そこに、聞き返さずにはいられない言葉があった。
「……何?」
「ん?」
「今、何て言った?」
「俺の手で色っぽく動く様を眺めてえ?」
「背中を?」
「おう。だから、一番のお気に入りは後ろからってな」
………………つまり。
「ああ、そうか。俺、バックバージンのタチもタチだ」
鉢合わせた時以上の衝撃に、三白眼がまん丸になった。
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