夢のあとさき(3) [10.03.03.]
「ごちそうさん」
「おう」
ゾロが空いた皿を持って立ち上がる。
「片付けは俺がやるぞ」
「いや、これは俺がやる。一応プレゼントだからな」
「……じゃ、そういうことなら、甘えるかな。悪いな。……でも、うん、こんな贅沢なプレゼント、初めてだ。ありがとうな」
そういって、サンジは笑った。
「大したことねえよ」
ふいっと反らした目元が柄にもなく赤くなっているのを、サンジは見逃さなかった。それがまた、信じられないくらい嬉しかった。
こんなに幸せな誕生日は初めてだ。もうこれ以上の誕生日なんて、きっとないだろう。
自分を祝うために、自分のためだけの料理を自ら作ってくれたゾロ。
自分にだけ向けられた優しい時間。
苦しいだけだったこの想いに、こんな幸せを貰えた。こんな幸せを知ってしまったら、もう手放せない。これだけで、もうずっとずっと抱えていける。大事に大事に仕舞っておこう。
片付けを終えて席に戻ると、サンジは空のワインボトルを大事そうに抱きしめて眠っていた。幸せそうに柔らかく微笑んで。
その寝顔を見ながら、ゾロはグラスに残ったワインをゆっくりと飲んだ。
グラスが空になると、そうっとワインボトルを抜き取り、2つのグラスと共に片付けた。
戻ってくると、少し躊躇しながらそっと金の髪に触れた。しばらく金糸を撫でた後、毛布を持ってきてサンジをくるむと、起きる気配が全くないその体を抱き上げた。
唇が重なる寸前で止め、抱きかかえる腕に少し力を込めて、ラウンジを後にした。
end.
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