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love affair? (1) [12.04.29.]


 思えば、最初から惚れていたんだと思う。ムカつくが、そうじゃない方が更にムカつく。
 お互い、そうは思っても口にはしない。





 ゾロはバイだ。男も女も抱ける。だからバイだと言ってはいるが、どうやらそれは違うと言われた。発散できりゃあいいんだろうと。言われて納得。面倒臭い。
 その面倒臭いのこそ恋の醍醐味と、絶えずレディを褒め称え捲るサンジは、それでいてゲイだ。甘い香り、柔らかな曲線、魔性の瞳(以下略)なレディは、レディというだけで麗しく幸福をもたらしてくれるのだけれど、この渇望にも似た情の矛先は、何故か常に男だった。無駄のない鍛えられた筋肉のしなやかさに魅せられる。それが自分によって艶めかしく美しく動く様に、サンジはこの上なく悦を感じてしまうのだ。
 そんなサンジにとって、ゾロの身体は美の塊だ。この俺をうっとりさせちまうくらいの肉体、男も女も引く手数多なのは心底納得。更にはこの美の一端を担うのは俺様の料理なのだと、サンジは常々思っている。
 そんな2人が、航海中に仲間の目を盗んで発散するようになったのは、そう最近のことではなかった。


* * * * *



 その夏島は歓楽街の栄えた島で、気候に似合った情熱的で開放的な活気に満ちていた。
 当然花街もとても賑わっていたが、花を売るというより、滞在中の恋人というような雰囲気に満ち、あの独特な物哀しい華やかは全くなかった。
 その一角にある酒場に、サンジは立ち寄った。そこは、値段の割にいいワインを揃えていて、おまけに食事もなかなかのいい店だった。だが、それ以上に収穫だったのは、サンジ好みの綺麗な肉体の男に声を掛けられたことだ。
 奔放な土地柄、酒を交わしながら会話を楽しんだ後は、同性でも当然という自然さでベッドへも誘われる。
 そこからがまたサンジの好む駆け引きが始まる。自分の望んだ条件にイエスと応えさせるのは、一晩とはいえ甘い時間を過ごす為の醍醐味だ。
 冗談と笑い飛ばし、本気と分かって躊躇するも未練と興味に揺り動かされ、今夜も手管に落とされた男が一人。サンジは妖艶に笑ってみせた。
 逞しい腕に腰を抱かれながら、連れ込み宿になっている店の2階へ向かうと、同じく階段に向かって歩いてくる男たちと鉢合わせた。

「「あ」」

 スレンダーな男に腕を絡められたゾロだった。
 呆気に取られて固まる2人に、それぞれの相手が知り合いかと話し掛けるが、全く聞こえちゃいなかった。なにせ、連れている相手が意外過ぎだ。

「「……」」

 先に我に返ったのはサンジだった。

「テメエ、ノンケじゃなかったのか?」
「別に男でも女でもどっちもいける。てめえこそ、野郎を張り付けて蹴り飛ばさねえでいるんだな。女好きは振りか?」
「レディは心の奥底から崇め奉ってるに決まってるだろうが」

 いつも通りに応ずるも、やはりいつも通りにはならない。変な感じだ。

「「……」」

 妙な沈黙。
 それを破ったのは、今度はゾロだった。

「萎えた」

 溜め息混じりに一言。

「はあ!?」

 応えたのは、連れだっていたスレンダー。

「悪い」
「えー、そんなあ。あんた、久々にタイプの男だったのに」
「俺でもいいか?」
「へ?」

 不満げなスレンダーに誘いをかけたのはサンジの連れ、思わず呆けた声を上げたのはサンジだ。

「あんたもその気がなくなっちまったようだしな」
「あー……ワリイ」
「ということで、振られた者同士、どうだ?」
「んー、いいよ。アンタもなかなか色男だし」
「ということで」

 そう言うと、男はサンジの腰から手を離し、ゾロの隣にいる男にその手を伸ばした。スレンダーな男は、その腕に収まるように男の腰に手を回した。そして、2人仲良く階段を上っていった。途中、サンジといた男が、振り向きもしないまま空いている方の手を軽く上げ、部屋の鍵を軽く揺らした。
 サンジは今夜の宿がと思ったが、まあ仕方ないかと思い直し、そうだとゾロに向き合った。

「テメエ、部屋は?」
「ある」

 そう言って、鍵を見せた。

「テメエのせいで宿無しになっちまった。責任取って泊めやがれ」
「ああ!? でも、まあ、聞きてえこともある。いいぜ。酒でも飲むか」「そうだな。なんか飲みてえ気分っつうか、飲まなきゃやってられねえな。酒貰ってくるから、待ってろ」

 そう言うと、踵を返して酒を受け取り、ゾロと共に部屋へ向かった。



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