a present for you(2) [11.03.31.]
少しずつ、サンジの質問に答えるような形でゾロが口を開く。
いつの間にか、喧嘩もせずに年相応な恋愛話をする2人を他のクルーが眺めるような形になっていたが、それにすら気付かずに杯を重ねて盛り上がっているのはサンジだった。
そう。圧倒的にサンジが飲まされているのだ。
一方で、柔らかくサンジを見ていたゾロの視線が変わっていた。
「2人とも、仲良くできるんだな♪」
「仲良くねぇ。サンジ君、気が付いてないわよね」
「剣士さんが想いを寄せている相手?」
「あれ、どう考えてもサンジのことだろ? それに、見ただろ? あの視線!」
「その視線だがよ、目つき変わってきたぞ」
「教えて差し上げた方がよろしいですかね〜ヨホホ」
「サンジもゾロが好きなんだから、放っときゃいいんだ」
あれだけ食べたのに、まだ酒のつまみに手を出す船長に一斉に視線が集まった。
「なんだ、知らなかったのか?」
そのまま今度はサンジに視線が集まるが、当の本人も豆鉄砲くらった顔で固まっていた。
「そうなの? サンジ君」
「いや、知らないよ。初耳だ」
「バカだなあ、サンジ、自分のことも分かんねえのかよ」
「いや……いやいやいや、ルフィ、ちょっと待て。何で俺が緑腹巻きに惚れなきゃならねえ。俺はナミさんとロビンちゃんという恋の女神に翻弄されているんだぞ」
「え〜、そうか?」
「そうだ!!」
それまで黙っていたゾロが、静かに酒瓶を置いた。
今度はゾロに視線が集まった。
「船長、クソコックが俺に惚れてるって根拠はなんだ?」
「そんなもんねえ、勘だ!!」
ドーンという効果音を背負って、自信満々に言い放った。
「ルフィ〜」
ゾロ以外はがっくりと肩を落とした。
その時。
「うわっ!」
ゾロがサンジを担ぎ上げて、歩き出した。
「コラ、てめえ、何しやがる! 降ろせ!!」
「さっきの話じゃ、俺はそいつに惚れてるんだろ? あれはてめえの事だ。で、てめえも俺に惚れてるんだろ? だから、2人きりになりてえ」
「ア、アホ! 俺がてめえに惚れてるってのは、ルフィの勘違いだっ!」
「これまでルフィの勘が外れたことがあるか?」
「ないわね」
「ナミさん!?」
他のクルーは何故か納得顔だ。
「サンジ、よかったなあ」
「何がだ、鼻! オロスぞ!!」
「ロビン、そろそろ寝ましょ」
「そうね。誕生日おめでとう、コックさん。お幸せに。お休みなさい」
「ロロロロビンちゃん!? 俺は貴女と幸せになりたいっ!! ナミさんの恋の下僕なのにっ!!」
「照れなくていいわよ。私達が出ていくから後はご自由に。ほら、みんなも撤収、撤収」
ナミに言われて立ち上がる面々。
「よかったなあ、ぐるぐる。感激で1曲できそうだぜ」
「コラ待て!!」
「ヨホホホホ、私もぜひコラボレーションなどさせていただきたいですね〜」
「ふざけんなっ!! 放しやがれ、クソ緑っ!!」
「………………サンジ」
暴れ騒ぐサンジと、それを後目に部屋を出ようとした全員がゾロを見て、また固まった。
「サンジ」
「あ………………」
愛しくて堪らないというような、それでいて真剣な眼差しがサンジを射ぬいていた。それはもう、見つめられているサンジ以外も思わず赤面するほどに雄弁だった。
そして、そんな2人から視線を外せないまま、邪魔者は退散とばかりに後退りするように部屋を出たのだった。
「ウソップ、明日の朝食はお願いね」
「何で俺?」
「バカね、サンジ君が起きてこられると思ってんの?」
「イヤイヤイヤ、さすがにねえだろ、そこまでは」
「そう思う? 相手はいろいろ飛んじゃってるゾロよ」
「普段より紳士だったんじゃねえ?」
「確かに警戒心ゼロで素直だったわよ。だから多分、そっちも素直よ」
「本当だわ。コックさん、照れちゃって可愛いわね」
「やだ、ロビン、覗くなんて」
「ちょっと心配だっただけよ。でも、幸せそうだから結果オーライね」
「うおおおっ、想像してはいけない病がっ!!」
「ということで、みんなアクアリウムバーには近付かないこと! 消灯、就寝!!お休み〜」
果たして、プレゼントを貰ったのは誰だろう?
end.
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