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夢のあとさき(2) [10.03.03.] 


「これ、辛いのか?」
「いや、そんなには辛くねえ。ペペロンチーノくらいにしてえなら足りねえよ。唐辛子いるか?」
「いる」
「ほらよ」
「生意気にも、いい香りがしてきたわ」
「いちいち文句つけるなら、部屋に戻れ」
「てめえはナミさんに文句つけんな」

 サンジは、今この夢のような時間をようやく受け止められたのか、やっといつもの調子が出てきた。その一方、煙草を吸うこともせずに、ゾロの隣で料理をする姿を見つめる。

「……あんま見てんな」
「いやあ、結構本気で感心してんだ」
「やだ、ゾロ、あんたでも緊張するの? ちょっとキモいわ」
「だから部屋へ帰れ!」

 怒鳴りつけながらも、茹で上がったパスタを上げ、湯を切り、ネギとアンチョビの入ったフライパンにあけ、ざっと合わせた。そして、仕上げにオリーブオイルを少し。
 そこにサンジが皿を差し出すと、ちらっと目を合わせたゾロが、出来上がったパスタを皿に盛った。

「美味しそうね」
「意外だわ〜。味見させてよ」
「てめえには食わせねえ」
「何よ、ケチ! 一口くらい、いいじゃない!!」
「絶対やらねえ。ほら」

 そういって、サンジに差し出した。
 受け取らずに皿を見つめるサンジの顔を、不審気に覗いて、ゾロは軽く目を見張った。

「すげえな。サンキュー、ゾロ」

 そういって微笑んだ顔に、今度はゾロがフリーズした。

「なあ、せっかくだ、ワイン開けよう。それ、運んでくれるか?」
「……ああ」

 嬉しそうにワイングラスを準備するサンジにロビンが声を掛けた。

「コックさん、グラスは2つね。私達は部屋へ戻るわ」
「え?」
「誰かさんがケチだからね」
「さっさと戻りやがれ!」
「えーえー、戻りますとも。じゃあサンジ君、プロの本当の感想をビシッと述べてやって。お休み〜」
「お休みなさい」

 サンジに軽く微笑んで、ロビンも部屋へ戻った。
 ワインとグラスを持ってきたサンジが席についた。何とかいつも通りにしようとしているが、嬉しさは隠しきれない。
 その表情に、ゾロが少し焦っていることなど全く気づかないで、ワインを注いだ。

「本当に出来るんだな」
「嘘だと思ったか?」
「こうもちゃんと作れるとまでは、さすがにな。食っていいか?」
「文句は聞かねえぞ」
「ははっ、言うかよ。いただきます」
「おう」

 二人して妙な緊張を隠して普段通りを装う中、サンジが口に運んだ。

「美味い」
「そりゃよかった」
「お前らしい」
「あ?」
「酒に合う」
「確かにな」
「好みの味だ。本当に美味いよ。何で作らなかったんだ?」
「あ?」
「俺が船に乗る前。作れること自体、ナミさん、知らなかっただろ?」
「聞かれなかったから、言ってなかっただけだろ。まあ、どっちにしろ、俺が作ってやらなきゃならねえことはねえ」
「じゃあ、何で今日は作ったんだよ」
「てめえが食いたがったから」
「?」
「ちょうど誕生日だしな。本人が望んだことなら、嫌がられることもねえだろうと思ったんだよ。それとも、あれは社交辞令だったか?」
「何で俺が毬藻に気を使ってやらなきゃなんねえんだよ。社交辞令なわけねえ。でもって、すげえプレゼントだな、これって。プレミアものか」

 ゾロが料理をすることを、俺だけが知っていたのか。ゾロの手料理を口にしたのは、俺だけなのか。ゾロが俺のために作ってくれたのか。うわー。その事実だけで、ワインなんかなくても酔っぱらっちまえるな。

「そういえば、てめえ味見してなかったんじゃねえ?」
「……忘れてたな。一口くれ」
「やらねえよ。これは俺のだ」
「作ったのは俺だぞ」
「やらねえよ」

 こんなやり取りが夢のようで、クスクス笑いながら、また口に運ぼうとした手を捕まれた。 何しやがると文句をつけようとすると、ゾロはそのままパクリとパスタをほおばった。

「もう少し辛くてもよかったか?」

 ……強制的だったけど、これって俺がゾロに食わせた図じゃねえ? っていうか、ゾロ、俺の手握ってる? いや、手じゃなくて手首を掴んでるだけだって。でもって、ひょっとして、間接キス? その乙女思考は何だよ!

「おい、どうした?」

 我に返ったサンジの顔は、一気に真っ赤になった。

「一口ぐらいで怒るなよ。味見だ、味見」
「言えよ! びっくりするだろうが!」
「やらねえって言ったからだろうが!」
「もうやらねえよ!」

 真っ赤な顔のまま、皿を持って横を向いて食べ始めた。
 そんなサンジの様子を、ゾロは何かを押し殺すように、サンジに気付かれないようにため息をついた。



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