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不偏な棘 [09.12.10.]


 挑戦者がいる島に着くと、俺達を残してみんな下船した。


* * * * *



 ゆっくりと朝食を取る間、ゾロはコーヒーを飲みながら待っている。会話はない。
 ただそこにいるだけで、何も語らずとも、否、語らないからこその幸せを、お前と出会って初めて知ったんだ。


* * * * *



 最初に二人で残された時、気にもしなかった。まさかお前が仕組んだなんて。

「照れるゾロなんて、貴重なもの見ちゃったわよ。キモいだけだったけどね」

 どんな態度でナミさんに頼んだんだ? キモいってよ。バカだな。恥ずかしいヤツめ。

 お前は、自分が何時どんな風に死んでも、別に何も思わないだろう。死は、それ以上でも以下でもない、ただ「死」でしかない。
 「後悔」とか「未練」とか、それすら糧にしてしまうお前が、それに捕らわれがんじ絡めになる俺の為に素直になる時間を作ってくれようとしているんだろう。
 ああそうさ、どうせ俺はグダグダ考えるさ。それでもって、素直っていうのは一番縁遠いんだよ。

 お前は強い。簡単にはやられるわけはない。俺の蹴りでも死なないくらいだ。だから、そういう心配はしてやらない。
 でも、人は脆い。時として、本当に呆気なく消えていく。
 お前の気配が離れた後、その万に一つの可能性が俺を唆す。でも、それを晒せる性格でもない。まあそういうのは、可愛いレディの専売特許ってもんだ。
 俺に出来るのは、その声を聞き流すことだけ。抗うのは無駄だ。絶対消えない。マイナス思考には自信があるからな。

 こんな関係になってから、いつかお前と離れることも、その時俺の何かが壊れることも、日々あらゆる恐怖の棘が突き刺さる事は、全部承知の上だ。そして、棘は絶対消えないことも。俺の後ろ向きな姿勢をナメるなよ。
 それでも、その上で、棘をお前ごと抱え込むと決めたんだ。

 だから、そんなに俺を甘やかしてくれるな。毬藻のくせに生意気なんだよ。

 素直に泣き言を言わないことが、俺のプライドじゃねえよ。
 俺のプライドは、どんな状況でも、何も聞かずに笑って「お帰り」って言ってやることだ。
 例えどんな姿であったとしても、笑って抱き締めてやるよ。
 だから、甘やかすより甘えてくれりゃあ助かるぜ。

 「惚れてる」の一言も伝えてやれない性格だが、その分精一杯抱きしめるから。それでお前は分かってくれると思うのは、やっぱり甘えているんだろうな。
 矛盾してると笑ってくれ。





 さて、そろそろ拾いに行く頃合いか。
 お? 一人で帰って来られたみたいだ。
 出迎えられるこの瞬間、幸福という名のでっかい棘が、ゆっくりと全身を突き刺していく。
 軋むように、心が痛い。
 
 お帰り、ゾロ。





end.



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