「なまえ」

一人、想いに耽るなまえを現実に呼び戻す声。
少し冷めたようなその声になまえは渋々振り返った。
思った通りと言うか、振り返った先には怪訝そうに顔を歪めた男が立っていた。
はあ、とため息をつくと小柄な男は腕を組み、少し見下すみたいに吐き捨てた。

「またここに来ていたのか」
「だって、彼の傍に居たいから」

少しむっ、としたが台詞からしても慣れているのだろう。
なまえは決まったようにそう返した。
小柄な男は眉をしかめ、サングラスで見えない瞳を曇らせた。

「なまえ、お前いい加減に目を覚ませよな」

そう言われたなまえは、何が?と言ったポカンとした表情を見せたが、すぐにハッとした表情になり、またすぐ表情を曇らせた。

「MZD貴方、私が彼に不釣り合いだって言いたいのね…確かに彼はとっても綺麗だけど」
「そうじゃないだろ」

ピシャリとした冷たい口調になまえは眉を潜め怯えたようにMZDと呼ばれた男を見つめた。
そのあまりにも無垢な視線にMZDは言おうとしたあまりにも残酷な言葉を飲み込んでしまった。

「……もういい」

くるりと向きを変えると、「もう飯だから、早く帰れ」とだけ残してその場を後にした。


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