ふとした瞬間にMZDの手の温もりを感じた。
人と手を繋ぐなんて、家族以外では初めてに近い。
そう思うと手から汗が滲み出てきた気がする。
「なまえ」
手を気にしているとMZDに名前を囁かれ、顔を上げると目の前にMZDの顔があって、さっき見たMZDの恋人が頭に浮かんできた。
ビクッ、なんて表現が合いそうなくらいなまえの肩が動いた。
自分では見えていないだろうが、強張った表情はどこから見ても怖がっている。
「怖い?」
本当は怖かった。
MZDに感じる男が怖かった。
でも見えっ張りななまえは首を横に振った。
「可愛い奴」
悪戯っぽく微笑むMZDはいつもの笑顔より柔らかく見えた。
「えむ、ぜ」
「ん」
MZDの顔がまた近付いてくる。
なまえは今度こそは、と瞳を固くつむった。
そっと触れるMZDの唇は初めての感覚だ。
やあらかくて、ぽてぽてしてる。
何とも言い難い。
何秒かしてMZDの唇が離れると同時に、なまえはゆっくりと瞼を開いた。
1番初めに見えたのは満面の笑みのMZD。
ニヤニヤとどこかの童話に出て来る猫のような笑顔でなまえを凝視している。そんな視線になまえは羞恥でいっぱいになった。
「うっ…」
両手で顔を覆うようにして、真っ赤に染まった顔を隠すと、意地悪な彼が意地悪な声で意地悪をする。
「なまえどうしたー?」
「どうもし、てません」
顔を覆う手の隙間から、MZDを覗くとMZDと目が合って、また意地悪に笑うから名前はもう何が何だか分からなくなっている。
「お前可愛いなー!!ちゅーさせろ!!」
「な、に」
MZDの発言にびっくりして手を退けると、また唇を奪われていて体が固まる。
先程より短い間隔で唇が離れる。するとMZDが「お前下手くそだなぁ」と笑うものだからなまえは何だか悔しくて、自分からMZDに唇を押し付けた。
(MZDがしてたみたいに)
二回のキスで学んだ動きを実演してみる。
とは言ってもディープキスなんてできるわけもないので、ただ唇を広げたり閉じたりするだけだ。
ゆっくりと唇を開いたり、閉じたり、人にされるより自分でするとかなり恥ずかしい事が分かった。
耐えられなくなって唇を離すと、ぎゅっとMZDに抱きしめられて、耳元で「上手」と囁かれた。
身体が一気にほてる。
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