それから、何年かして。
MZDがまたなまえを自分の部屋へ招いてくれた。

なまえはMZDが自分を好きなのを知っているから、何となく、呆れられないように見た目をいつも以上に気を使った。
レースがついたワンピースにピンクのほっぺ。
何でこんなに嫌われないように必死なのだろう。
MZDと付き合う気なんてないのに。

(まあいいか)

時間ピッタリにMZDとの待ち合わせ場所に向かった。
そこには先に来ていたMZDが壁を背に腕を組み、指をリズムに合わせて動かしていた。
声をかけると、目が合って、口元が綻んだ。

部屋に通されると、置いてあった黒いソファーに腰を落とした。

「何か飲むか?」
「あ、じゃあ麦茶で」
「ん」

ちょっと待ってろ、と言われるとMZDは冷蔵庫を開いた。
なまえは言われた通りソファーで大人しく座って周りは見回した。
MZDの部屋に入るのは二度目だ。
前来た時より部屋が綺麗になっている。と思った時に、テレビの横に置かれた写真が目に入った。

MZDと知らない女の人だ。どこかの旅行写真のようで、二人の後ろには観光パンフレットでよく見るようなお城がどでかく載っていた。

(誰だろう…)

ソファーから立ち上がってよく見ようとした瞬間、MZDが帰ってきてなまえは慌てて上げかけた腰を降ろした。

「ん?どうした」
「え、いや、別に」

別にやましい事があるわけでも無いのに挙動不審になってしまう。
差し出された麦茶を勢いよく飲み干すと、なまえはぽつりぽつりと何気ない会話を紡ぎ出した。

なまえは緊張からか自分が何を喋ったか分からなくなってしまっていた。
ただMZDが伏し目がちに「そうか、なまえは俺が他に誰も好きにならないと思っていたんだな」と笑ったのを鮮明に覚えている。

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