「ねぇ、なまえちゃん?」

先程とは打って変わって、猫を可愛がるような甘い声でスマイルはなまえを呼んだ。
それだけで少し頬を赤らめる彼女はスマイルを嫌ってるわけではない事が分かる。

じっ、と見つめると、なまえは「はい」と消えてしまいそうなくらい小さな返事を返した。

それを聞くと、スマイルは絆創膏が目立つ手をぎゅっとなまえより幾分か大きな手で包み込んだ。
なまえはそんなスマイルに驚いた顔もせず、ただ彼の片方しか見えない真っ赤な瞳を黙って見つめた。

「僕はね、ごめんなさいよりありがとうの方が嬉しいなぁ」

スマイルがそう言うや否やなまえの顔が歪んだ。
真一文字だった口はゆるゆると曲線を描き、目には熱い涙が貯まっていた。

そんななまえの頭を優しく撫でると、それを合図に貯まっていた涙のダムはついに崩壊してしまった。

小さく泣き啜るなまえの肩を、腫れ物でも扱うようにそっと優しく抱き寄せると、スマイルは酷い安心感に襲われた。
庇護欲というのか、謙遜ばかりのなまえと居て、苛々しないのか?
と、いつかに誰かも忘れた人に聞かれた事がある。
全く、というわけでは無い。

でもソレよりこの小さな生き物を自分が守っているのだ、という感情が強くって、そんな感情忘れてしまう。

これが愛だと気付くのには少し時間が掛かったけれど。

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