「なまえ、改めて…お誕生日おめでとうっス」
「うん、ありがとう」
「出会ってくれてありがとうっス…なまえのご両親もありがとうっス」
「アッシュったら大袈裟ね」
アッシュの言う事があまりにも大袈裟に聞こえて、なまえはつい笑ってしまった。
アッシュは少しむっとした顔で口を尖らせた。
「本当の事っスよ!」
「ありがとう。すごく嬉しいよ、アッシュ」
口を尖らせるそんな仕種も可愛く見える。
思わず口元が緩んでしまう。
アッシュはそんななまえを見て、一緒になって口元を緩める。
すると、突然何かを思い出したように、ポケットを探りだした。
目的の物を見つけたのか、アッシュは少しの間動かず何かを考えているようだったが、暫くすると、何かを諦めた風にため息をついた。
なまえが自分が何か粗相をしたのか、と慌てていると、アッシュはなまえの目の前に手を突き出した。
その手の中には小さな箱が収まっていて、なまえはそれが何であるか察した。
「あの、これ、誕生日プレゼントにって…色々サプライズとか考えたんスけど…いいの浮かばなくて…」
不器用な彼の事だ。
一生懸命自分の為に色々考えていてくれたのだろう。
そんなアッシュを想像するだけでなまえは胸がきゅんと鳴った。
真っ赤な顔で挙動不審なアッシュが堪らなく愛しく思って、なまえはアッシュにぎゅっと抱き着いた。
アッシュはビクッと震えて、「なまえ…?」と恐る恐る尋ねてきた。
一々可愛いらしいアッシュにか、感動からなのかなまえはついに瞳に涙を貯めた。
「ありがとう、ありがとうアッシュ」
ぎゅっと抱きしめる力をなまえが強めると、アッシュはそっと、優しくなまえの背中に手を回した。
「どういたしましてっス」
そう言うアッシュのネクタイが緩んでいるのが、なまえの目にはしっかりと見えていた。
何故だか、キッチリ閉まったネクタイよりそっちのが安心して、彼の露出に慣れたのだな、となまえは笑いを堪えた。
(ああ、こんな素敵な誕生日は初めてです。)
外されるボタンを見て、なまえはきっと今の自分は髪の毛一本から足の爪の先までアッシュへの愛でできているのだな、と思った。
訳も分からないし根拠だって何処にも無いが、自信はあった。
そんな事をごちゃごちゃ考えていたが、ちらりと見た彼の真剣な顔に全て掻き消された。
呆れる程鮮やかに
思い出を頂戴
誕生日プレゼントにさ
Title by 「確かに恋だった」
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5/21が誕生日な
姉に捧ぐ
20120522
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