暫くアッシュと雑談をしていると、アッシュが何か言いたげになまえを見ているのに、なまえは気付いた。
なまえはアッシュに「アッシュ?どうしたの?」と尋ねると、アッシュは急に口ごもって、下を向いてしまった。
「何か言いたい事があるの?」
と言うとアッシュは、はぁと大きなため息をついて地面にしゃがみ込んでしまった。
なまえはそれにつられて、アッシュの目の前に一緒になってしゃがみ込んだ。
アッシュはわざとらしく大きく頭を掻いて、小さな声で「聞いたら多分引くっスよ…」と呟いた。
なまえは少しムキになって「引かないよ!」と言いながら立ち上がる。
「なまえには敵わないっスね」
クスッと笑うアッシュに、なまえはムキになった自分が恥ずかしくなる。
「いっいいから続けて!」
またまたムキになったなまえの顔はほんのり赤い。
アッシュは黙ってじっとなまえを見つめた。
長い緑の前髪からちらりと赤い瞳が覗いた。
なまえそれに堪らなくドキリとする。
普段見えないから、と、うなじを好む男性の気持ちがちょっと分かった気がする。
普段見えない瞳が見えた時の破壊力は計り知れない。
「あの、ちょっと思っただけなんス……二人で過ごせたらって…」
「えっ…!」
なまえは目を見開いて驚いた。
それは悪い意味では無い。
どちらかと言えば嬉しい、そんな驚きだった。
だがアッシュはそんな反応のなまえを見て、悪い意味で驚いたのだ、と勘違いしたのか、勢いよく立ち上がって手を振りながら必死に弁解を始めた。
「いやっ!すみませんっス!やっぱり駄目っスよね!!我が儘言って申し訳ないっス!!」
「いやっ!そうじゃなくて、」
「えっ…」
「……嬉しい、です」
かあっとなまえの顔が赤く染まる。
それにつられてアッシュの顔も赤くなる。
なまえはそんなアッシュの見えない目を見つめながら、
「私も二人で過ごせたら、って思ってた」
「えっでも」
「…二人で、抜け出そうよ」
なまえにしてはとても珍しい意見だった。
根が真面目な彼女が抜け出そう。だなんて、アッシュは信じられなくて何度もまばたきをした。
それでも彼女の顔が真剣だから、アッシュもそれに答えようと、開いたままの口を閉じた。
「よかったんスかね…パーティーの主役なのに…」
「いいの!…MZDや皆には悪いけど、アッシュと過ごしたいから…」
パーティーをこっそり抜け出した二人はなまえの家に来ていた。
アッシュは近場のバーを提案したが、なまえがそこでは二人きりにはなれないから、と何とも可愛い事を言うものだから、アッシュはまた赤くなってしまった。
結局、なまえの家の方が近かったのでなまえの家に行く事になったのだ。
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