真っ赤な顔だったなまえの顔色が変わる。
汗ばんで、小刻みに肩が震えている。
スマイルは先程までの笑みが消え、何時になく真剣に見えた。
じっと見つめ合う二人に沈黙が走り抜ける。
お互い瞬きも忘れて見つめ合った。
端から見ればにらめっこでもしてるような、そんなシチュエーションに見える。
そしてそんな沈黙を先に破ったのはなまえ。
リップクリームでしっとり湿った唇が微かに動く。
「スマイ」
「なんちゃってぇー!」
スマイル。
そう言おうとしたなまえを遮りまたあの笑顔に戻ったスマイル。
なまえは間の抜けた顔で「へ?」とスマイルに尋ねた。
スマイルは「もちろん冗談だよ〜」とへらへら笑うものだから、なまえは怒るでもなく、先程自分が言おうとした事に羞恥を覚える。
「そうだよね、当たり前よね」
スマイルに言ったのか自分に言ったのか分からない。
羞恥で顔をまた赤くしたなまえは「トイレに行ってくる」と席を立ってしまった。
笑顔で見送るスマイルはなまえが居なくなると同時にはぁとため息をついた。
やり過ぎたなぁ、
漏れるように呟く。
あれではなまえが傷ついてしまった。
と罪悪感と後悔に襲われるスマイル。
しかし先程の彼女の表情と言ったら。
赤くなったり青くなったりまた赤くなったり、
ころころ変わる彼女の表情と顔色。
思い出すだけで笑いが込み上げてくる。
なんて愛しいんでしょう。
自分の感情に正直ななまえの身体。
自分では押さえてるつもりでも周りから見れば一目瞭然だ。
嘘がつけない。
でもそこが彼女のいい所でもある。
馬鹿正直な君は馬鹿。
「(僕の気持ちには気付かないんだから)」
ポーカーフェイスが得意な僕は本当の馬鹿。
もう少し分かりやすければなまえだって気付いてくれたかもしれないのに。
全く僕ってやつはー、とぶつぶつ心の中で文句を垂れるスマイルを余所に何時も通りのなまえが帰ってくる。
スマイルは何時通り。いや少し恥ずかしそうに笑顔を浮かべた。
「馬鹿正直な君は本当馬鹿」title by ポーリッシュ
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チキンスマイル
20120510
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