それから、アッシュは申し訳なさそうに次から気をつける。と言って、部屋から出ていってしまった。
一人っきりになったなまえはソファに顔を埋めた。
なんて酷い事を…
悪気があったわけではないのに
分かっているのに
ついカッとなって言ってしまった。
しかも、一回ならまだしも何度か同じような事があった。
自分のプライドが高いのかはたまたアッシュが無神経なのか。
なまえはその時も今のように後悔に襲われた。
全く、自分の学習能力の無さには呆れる。
と、ため息を零す。
後悔の嵐の中、なまえはふと考えた。
「(そういえば、付き合う時にした返事ぐらいでしかアッシュに好きって言ってないや)」
その時はその事には深く考えず。
なまえは今起きた事の後悔しか考えて無かった。
いつ謝ろうか。
考えて考えてなまえはアッシュをデートに誘う事にした。
デートの最中にサラッと謝ってしまおう。
安易な考えだがなまえはこれでも一生懸命考えたのだ。
デートに誘うのだって、何処に行くのがベストかシュミレーションにシュミレーションを重ね、選んだし、誘う練習だってした。
準備に余念はない。
なまえは「(シュミレーション通りに…)」と考えながらアッシュを呼び止めた。
作戦はこうだ。
まずはアッシュが見たがっていた映画のチケットを二枚用意する。
がっついてるように見られたく無かったから、自分で買った。とは言わず知り合いに貰った。
調度二枚だし一緒に行かないか?
そういった単純な事がなまえはアッシュが一々どんな反応をするか考えて、全てに対して予測済み。だった。
「…え?」
予想外だった。
このシュミレーションはしていなかった。
想像もしなかった事にドクドクと心臓が脈打つ。
ぎゅっとチケットの入った封筒を握りしめて、アッシュの顔色を伺った。
「だから、ユーリかスマイルと行ったらどうっスか?」
ああ、嫌われたんだな。
と、なまえは悟った。
当たり前だ何度もあんな反応を繰り返せば、誰でも愛想を尽かす。
今にも溢れ出してきそうな涙を飲み込むと、なまえは渇いた唇を動かす。
目を刺激しないようにゆっくり
「…なんで?」
きっとアッシュに面と向かって「嫌いだから」と言われたら立ち直れ無い。
でも、聞かずには居られなかったのだ。
アッシュは少し黙って、顔を右に向ける。
その顔は少し不機嫌なような怒ってるような困ったような、あまり見た事がない表情だった。
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