(そういう所大嫌い)

「アッシュのそういう所、嫌い」


前髪で隠れて見えない瞳を見開いているのが分かった。
それほどまでにアッシュは驚いているのだ。
ああ、何て事を言ってしまうのだろうか。この口が憎たらしい。
なまえは自分の口を呪ったが、もう発してしまってからでは遅い。
アッシュは暫く黙ったまま、申し訳なさそうにへらっと力無く笑うと、「今度からは気をつけるっス…」と頭を下げた。

何故こんな事になったか、それは遡る事10分前。

なまえとアッシュは同じ部屋に居ながら別々に過ごして居た。
なまえはソファに座って大好きなお菓子を頬張り、アッシュはその横で音楽系の雑誌に目を通していた。

そんなおり、アッシュとなまえは偶然目が合って、合った瞬間アッシュは微笑み、きっと冗談のような軽い言葉だったのだろう。
アッシュはそれを言った。

「お菓子ばっかり食べてた太るっスよ」

彼は元々過保護気味でなまえの身体の調子をよく気にしていたし、嫌味で言ったのでは無い事は分かっていた。
だが、やはり恋人に、好きな人に、女性はとしてはかなり敏感になる「太る」と言う言葉を言われたら、少なからず恥ずかしい物である。
恥ずかしいやら怒りやら色んな感情が押し寄せてきて、なまえは顔が真っ赤になっていた。

お菓子を食べる手を止め真っ赤になってわなわなと震えるなまえを見てアッシュはしまった、と顔をしかめた。

「なまえ…あの…俺、」

慌ててフォローに入ろうとするが、もう遅かった。
なまえはアッシュの顔も見ないで、目に涙をためながら、それを呟くようにアッシュに突き刺した。


「アッシュのそういう所、嫌い」

そして冒頭に戻る。



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