[お守りA]

*長編/From here to there with youヒロイン

「好きだ」

そう言いながらキスをしたら嬉しそうに笑う名無しの顔が視界いっぱいに広がる。
その後は、まるで自然の流れの様にゆっくりと重なり合う唇。
お互いの気持ちを理解し合えばこの行為を止める理由などない。
そのまま名無しを抱き締めたまま後ろへと倒れ、自身の上に乗っかる様な形になる。

「ん…、っ…」

自分に跨っている形の良い身体は抱き心地も抜群で、短いショートパンツから伸びる足と少し肌蹴たシャツが更に興奮させる。
名無しの頭を片手で押さえつけて舌を絡ませれば少し眉間に皺が寄る。
それでもその行為に応えてくれる姿が嬉しかった。

ずっとこうしたいと思っていた。
唇を離し頬を撫でれば、至近距離で真っすぐこちらを見つめる名無しの瞳と視線が重なる。

「オイラに全部くれよ」

ポツリと出た言葉は自分達の動きを止める。
このまま何も言わずに行為を進めれば、自然とそんな流れにはなるだろうが、ちゃんと名無しの口から聞きたかった。

臆病だなと自分でも思う。
でも、もしこれ以上進んで、さっきみたいにまた傷付けたらと思うと中々踏ん切りがつかなかった。
今更だと言われればそうかもしれないが、それでももう一度名無しの口からちゃんと返事が欲しかった。

「…私の気持ち伝わってなかった?…というか、さっき欲しいって言ったのデイダラでしょ…」

それは名無しにとって予想外の言葉だったのか、少しだけ不貞腐れた表情に変わった。
確かにそうとは言ったが、あの時はまさか「今すぐ」にくれるとは思っておらず、抵抗されるだろうと思っていたから。
だから、名無しのその言葉と表情が名無しなりの答えだったと気付き、顔が緩くなるのを感じる。
二人っきりだし、名無しに情けない顔を見られるのにももう慣れた。

ずっと欲しくて、ずっと触れたかった。
こうやって簡単に触れられる距離と心が心地良くて安心する。
そのまま何も言わずにキスをして抱き締めれば素直にそれを受け入れ胸元に顔を埋められる。
顔を埋めている名無しの髪に口付ける。

服の隙間から手を侵入させ、ゆっくりと滑らせながら名無しを堪能する。
時折、その動きがくすぐったいのか、小さく艶っぽい声が漏れる。
今度は逆に名無しを組み敷き、跨りながら上から見下ろす。

「…やめてって言っても止めねーからな」

その言葉を合図に再び唇を重ね舌を絡ませながらゆっくりと衣服を脱がす。
露になった柔らかな膨らみを堪能し、首筋や胸元に口付けし痕を残す。

***

初めて見るデイダラの男としての顔。
いつもの勝気な笑顔とは全く違うその姿に目が離せない。
自分の知らないデイダラに胸が高鳴る。
そんなデイダラに触れたくて手を伸ばし、その綺麗な髪に指を絡める。
その間にも行為は進む。

「ちょ…とっ、んっ…」

どういう構造なのかは未だに分からないが、デイダラの両手にある口のねっとりとした舌が自分の身体を伝い愛撫する。
キスをされながらのその動きに身体が勝手に反応する。
まるで意思を持っているのかと思うそれは絶妙な力加減で動き、その度に声が漏れる。
じわじわと押し寄せる快楽に自然と息が上がり身体が疼く。
それでもキスは止まらない。

我慢出来ずキスの合間に名前を呼べば、顔いっぱいに広がるデイダラの情欲を感じさせる瞳が自分を真っ直ぐに見つめる。

***

懇願するような名無しの自分を呼ぶ声。
緩んだ表情、切なげに荒くなった吐息に欲情する。

今日この時ほど自身の両手にある口に感謝した事はない。
こんな顔を見せらせて我慢していられる程、自分も余裕がある訳じゃない。
再び激しく舌を絡ませながら、服を脱ぎ捨てそこに自身を宛がい奥へと進む。

(これは…、やばいな)

名無しと心が通っただけでも最高な気分なのに、肌に感じる感覚に我を忘れそうになる。
その感覚に無意識に喉が鳴る。
堪らず腰を動かし始めれば強烈な快楽に襲われ、夢中でその身体を貪る。
色街の女とは違う心も身体も初めて欲しいと願った女。

「はぁ…っ、んっ、デイダラ…っ」

熱を帯びた瞳が強請る様にこちらを見つめるものだから堪らない。
動きに合わせて漏れる声も背中に回る腕も全部、自分のものだ。

しんとした部屋に響き渡る肌をぶつける音と名無しの艶めかしい声。
もっとその声を聞きたくて激しく腰を動かす。
上から見下ろす名無しの息を上げながらも快楽に耐えるような表情に興奮する。
深く強く擦る様に奥へと突けば内壁の絡みつく感触に堪らず息を吐く。

「はぁ…、名無しの中、すっげぇ気持ち良い…っ」

心が満たされるだけで肌に感じる感覚がこんなにも違うだなんて思わなかった。
胸元や首筋に見える赤黒い所有印に満足感を覚えながらこの至福の時を堪能する。

***

ぞくぞくと背中を奔る甘い痺れに耐えるようにデイダラの背中に回している腕に力を込める。
激しく揺さ振られるのも、絡まる舌も何もかも全てが強過ぎる快感を引き連れてくる。

強い情欲を感じさせるデイダラの瞳はまるで獲物を狙う獣のよう。
引き締まった身体と汗で額に張り付く髪を乱暴に掻き上げる仕草にどきりとする。

「んっ、はぁ…、っ…!」

深く突かれる度に身体の芯が疼き無意識に下腹と脚に力が入る。
自分ではどうにも出来ない身体の反応と内側から込み上げてくる痺れる様な感覚に無意識に息が止まる。
その感覚に堪える様に強くデイダラ抱き付けばその様子に気付くように少しだけ動きは緩やかになったが、それでも揺さ振られると身体は勝手に反応する。
動かれる度に身体はびくりと震えてしまうほど敏感になっているにも関わらず、その大きな手は身体をするすると伝い下へと伸びる。

「デイ、ダラ…っ!待っ、んっ…」

「待たない…っ、ここ、気持ち良いんだろ…?」

意思を持っているかの様に好き勝手に動き回る舌は容赦無く敏感なそこを責める。
その刺激から逃げる様に腰を動かせば、逃がさないと言わんばかりにまた奥深くまで突かれ、何度も何度も小さな絶頂に襲われる。
静止の言葉は何の意味も成さず、逃げられない快楽にただ追いつめられる。
角度を変え、敏感なところばかりを刺激され、自分の口からは甘ったるい声ばかりが吐き出される。

真っ青な空のように爽やかな瞳が熱に溶けて艶めき、全身で自分の身体を欲している。
それが無性に嬉しくて仕方がなかった。
汗で額に張り付く髪を退け、首に腕を回しキスを強請る。

「んっ、ふ…っ」

「はっ…、名無し…っ!」

角度を変えより深くより濃厚なキスを繰り返す。
ずっしりと身体に掛かる重みが愛おしくて堪らない。

***

今までに聞いた事が無い様なとびきり甘い声でキスを強請られ、夢中でその唇に貪りつく。
もっとこの感覚を味わっていたいが、如何せん自身も限界が近い。
今はただ早くこの熱を開放したくて無我夢中で奥へ奥へと強く腰を押し付ける。
それと同時に腰に絡みついた足に力が入り、堪らず欲を吐き出す。

「くっ…、はぁ、っ…」

強く押し付けたまま名無しの首元に顔を埋める。
未だばくばくとうるさく鳴り響く心臓はまだ治まりそうにない。
それでも顔が見たくて、ゆっくりと唇を塞げば言葉では言い表せない様な気持ちを感じる。
心が満たされる感覚、これが幸せというものなのだろうか。

「…名無しがオイラの事、好きになってくれてすげぇ嬉しい」

「私もデイダラが好きになってくれてすごく嬉しいよ」

抱き締め、キスをしながらそう言えば嬉しそうに笑い同じ言葉を返す名無しにまた顔が緩くなる。
自分にだけ見せる名無しの特別な顔。
この時をどれだけ待ち望んだか。
この唇にこの身体に触れられるのも自分だけだ。
もう一度強く抱き締め、その感覚を身体全体に覚えさせる。

だが、そんな幸せな時間もふと目に入った時計によって一気に壊される。
もう少しこの時間を感じていたいが、さすがにそろそろ寝なければ明日からの任務にも響く。
少しでも時間に遅れればどうなるかぐらい容易に想像出来るし、朝っぱらから旦那の小言は聞きたくない。
仕方なくそのままベッドに入り名無しを抱き締める。

「…明日の任務行きたくねーな…。このまま名無しと居たい」

溜息を吐きながら愛しい恋人の身体に顔を埋めながそう愚痴る。
明日からの任務でまた名無しに会えなくなるだろう事を思うと行きたくない気持ちに拍車が掛かる。
ましてや、この身体を堪能したばかりだというのに、明日からのお預けを考えるだけでまた深い溜息が漏れる。
明日は指定された賞金首を仕留め、換金するところまでが自分達の任務だ。
任務自体は簡単なものだが、数が多く少なくとも一週間は掛かるだろう。

そんな明日からの任務に項垂れていると背中を撫でる手と小さな笑い声に気付き顔を上げれば、どこか嬉しそうな名無しの顔が視界いっぱいに広がる。

「ふふ…、好きだよ。待ってるから、早く帰って来て」

愛おしそうな顔でそんな事を言うものだから、つい我慢出来ずまた覆い被さり唇を塞ぐ。
段々と深くなるキスの最中、旦那の不機嫌そうな顔が脳裏に浮かぶが、すぐさまそれを掻き消し名無しに触れる。

(…旦那の小言ぐらい安いもんだな、うん)

さっきまでの考えなどもう自分の頭には無い。
明日の言い訳はまたその時になってから考えればいい。
そう勝手に結論付け、そのままその唇を堪能する。

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