干してあったスカーフでニコたちと闘牛ごっこしてたらリヴァイに捕まってぶっ飛ばされて、ただいまお説教中です。足がしびれてしにそうです。



愛と憎しみとちょっぴり平和





「毎度毎度いい加減にしろこのバカコンビ」

見たところ汚れていないスカーフを人差し指と親指だけでつまみ、地面に正座させられた私たちを見下ろすリヴァイの般若のような顔を見て、怒られてもいないのになぜかエルドが顔を真っ青にさせた。そのとなりで私たちの様子を爆笑しながら見ていたハンジも、あっちゃーとでも言いたげな顔で頭をかいている。
犯人は私たち二人だけじゃない。なまえ班みんなでやってたのに、スカーフの持ち主が現れた瞬間残る3人はすたこらさっさと逃げてしまったのだ。巨人との戦闘時にも勝るとも劣らないその瞬発力と俊敏な逃げ足に、うんうん。班のみんなも日々確実に強くなってるなあと関心していたところをうっかり捕まってしまったのである。(ニコはそんな私を助けようとしたが、当然リヴァイに適うはずもなくあえなく捕縛された)

「くっ、なまえ・みょうじ一生の不覚」
「全然反省してねぇだろ」

スパンといい音を立ててはたかれる。それを見たニコが、「異議有り!!」と右手を高らかに上げた。

「そもそも実行犯は我々だけではなくなまえ班全員ですし、それを黙認していたエルドさんや我々を見て楽しんでいたハンジ分隊長にも同様に責任を追及するべきです裁判長!」
「だれが裁判長だ」
「そうだそうだー。いいぞニコ!ひゅーひゅーかっこいい!」
「そ、そうですか?えへへへ」

野次を飛ばす私と照れているニコを、リヴァイがうじ虫でも見るような目で見たがそんなの慣れっこで痛くも痒くもない。
がんばれニコ、そのままリヴァイを言い負かして連帯責任に持ち込み処罰の軽減を図るんだ!

「俺が見たのは二人だし、テメェの言うエルドとハンジも見当たらないがな」
「え、」

そういわれてみれば、ついさっきまでリヴァイ越しに見えていた二人が忽然と姿を消している。なんということだ。あいつらめ、「フヒヒ、これ使ったあとそのまま干しといてやろうぜ、フヒヒ」とか言ってめちゃくちゃノリノリだったくせに!
恐る恐る上を見上げると、スカーフを投げ捨てて腕を組んだリヴァイの顔の影がいつもの8割り増しに増えている。うわ死んだなこれ。

「リヴァイ待て、話せばわかる。そのスカーフそんなに汚れてないし洗えばまた、」
「ニコ菌がついた。使用不能だ」
「ニコ菌って・・・(なまえ菌は?) じゃあ私のハンカチを代わりにあげるから、ほうらとってもかわいいイチゴ柄!」
「なめてんのか」

いよいよ生命の危機を感じ始めてきたところで、 「待ってください!」 しばらく黙ってやり取りを聞いていたニコが私たちの間に割って入った。リヴァイのおそろしい眼光にも怯まずに、私を守るように両手を広げた姿は実に男らしい。

「兵長、せめて班長の命だけはお助けを。それがだめなら・・・・・・俺の屍を越えて行ってくださぺごぉっ!」
「ああっニコオオオ!」

リヴァイの蹴りがみぞおちに直撃し一瞬にして屍になってしまった。君は勇猛だよ、でも無謀だったよ・・・。
白目を向いたニコの屍の隣で、苦し紛れに満面の笑みで笑って見せた。あ、だめですかそうですか。

それからひとしきりリヴァイのつま先が私のしびれきった足をグリグリ踏んで刺激し続けるという拷問を受けたあと、罰として1ヶ月のトイレ掃除を命ぜられた。
だけどちょっと気になる。
さっきのリヴァイは怒っているというより拗ねているような気がした。




「おい、出て来いクソメガネ」
「あららバレてた?」

なまえが気絶したニコを引きずりながらいなくなったあと、リヴァイが苛々した声色で私を呼んだ。
草むらから出てみると、機嫌の悪そうな我らが兵士長の鋭い視線。怒られるかと思いきや彼は「今度あいつらがスカーフに近づいたら即知らせろ」とだけ言い、そのままこちらに背を向けた。とぼとぼ歩いていくその背中が怒っているのにどこかさびしそうで、思わずぷっと吹き出してしまった。
段々小さくなっていく後姿に向かって声を張り上げる。

「あいつらみんな君が好きなんだよ!率先して遊ぶなまえなんか特にね!」

だからいつもスカーフに悪戯するのさ、かまってほしくて。
リヴァイはほんの一瞬だけ立ち止まったけど、そのまま何も言わずに本部に戻っていった。
それにしても、多分リヴァイは闘牛ごっこで牛役のニコがマタドールなまえに突進と称して抱きついていたところを見たんだろう。

「かわいいとこあるじゃないか」

屈んで落ちていたスカーフを拾い上げ、雑巾くらいには使えそうだなと折りたたんでポケットにしまい込む。
ありがたいことに今日もとりあえず平和です。


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