prologue

「お前は良くできた子だ」

幼い頃、そう言って頭を撫でてくれる手があった。
皺だらけで、傷だらけで、もう殆ど皮しかないような手だったけれど、それは温かかった。
いつからか、その手が自身に振れなくなり、少しずつ、小さくなっていくように感じた。
昔、その人は言った。

「お前が結婚して、綺麗なお嫁さんを貰うまで心配で逝けないよ」

お前は自尊心が強いからね。
そう、困ったように笑って頭を撫でてくれる手が、いつの間にか少しずつ遠くなっている事に、俺はうすうす気づいていたのだ。






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