epilogue

「おかえり」
「うん、ただいま」

いつもと変わらない様子を装って言うと、眠たそうな声で、しかし確かに返ってきた返事に、少し笑む。
思わず手を伸ばしそうになって、慌てて引っ込めた。
触れてはいけない、そう、自分に言い聞かせながら。
このままで良い。
きっと触れたら凪はそれを拒む。
そして、きっとばらばらに崩れて、もう戻らない。
このままが良い。
お互いの関係を微妙なバランスで保っていればいい。
そうすれば、誰も傷つかない。
だから、少しずつ競りあがってくる感情に、気付かぬ振りをした。
このままで良いのだ、と。

それでも、時は緩やかに、確かに、動き出す。
動き出して、いた。






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テーマ「人外ファンタジー」
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