20

思ったとおり、放課後には土砂降りとまでは行かなくても、それなりに強い雨が降っていた。
要はロッカーから折りたたみの傘を取り出しながら、そろそろ雨が雪に変わってもよさそうなのに、と内心溜息を吐いた。
雨が傘を打つ音は鈍く、傘の端から滴る水滴が肩にかかって少しずつ服の中に染み込んでいく。
吐く息は相変わらず白い。
ふと、昨日――と言うか、二日前の夜中に涼が言っていた事を思い出す。

――凪は、俺が斎槻さんについて知っているとは知らないのだ。

そう思い、少し居心地が悪くなる。
凪が自分で言わなかった、ということは、言いたくなかったと言う事なのではないのだろうか。
そう思い、ふと不安の影がよぎる。
もしそれがバレたら、何て言われるのだろう――。
そう考え、自然と俯く顔。
玄関を開けて、ふと見ると、よく見た靴が並べてある。
凪が帰って来たのだ。
要はただいま、と言いながら家に入ると、自室に行く前に居間を覗いた。
そこには、畳の上に毛布に包まりながら丸まって寝ている凪がいた。
その隣に銀も丸まっている。

「――ん」

のそり、と凪が起き上がる。
要はびくりと肩を震わせるが、凪は何気ない様子で、ただいま、と言って、そして、くあっと欠伸を零しながら。

「師匠から何か聞いた?」
と言った。
要は少しだけ照準して、

「斎槻さん、の事か?」

それに凪はそうそれ、と眠そうな声で言うと、

「別に隠してたわけじゃないから、気にしなくて良いよ」

と言って、再びぱたりと倒れた。
うめき声を上げながら体を伸ばしている凪の態度は普段と全く変わらない。
要は凪の言った事を理解すると、安堵したような、バツの悪いような、複雑な表情をした。
そして、何を言うかまよって、出来るだけいつもと同じように、

「おかえり」

と言った。






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