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涼さんの話によると、その人は凪が五歳の時に凪と会ったらしい。
その人はお茶が好きで、着物愛好家で、良く笑う人で、そして、涼さんの幼馴染――らしい。
名前は東雲 斎槻。
いまだに凪が想い、忘れられ無い人――らしい。

凪が涼の事を師匠と呼び始めてから一年――丁度凪が5歳の時だ――が経った頃。二人は山間部にある国に来ていた。

「師匠の知りあい――ですか?」

凪は、食器を棚に戻しながら涼の言葉に首を傾げた。
涼は凪が届かない棚に食器を上げながら、頷く。

「ああ。古い知り合いだ」
「……お友だち、ですか?」

首を傾げたまま凪が訊くと、涼は少し考えて頷いた。

「……まあ、そうだな。幼馴染だ」

そう言って一人頷くと、その『知り合い』ついて簡潔に説明をした。

「そのかたが、明日からここにとまりに来る、と」

凪が言うと、涼はそうだ、と返して、最後の食器をまとめて棚に入れた。
凪は頷くと、それで?と言う風に目で続きを促した。
まあ、大体は予想がつくが。

「それでな、客間、あるだろ?あそこ掃除しといてくれ」
「……それと、お酒と食事、ですね?」
「そうだな」
「わかりました」

涼がわしゃわしゃと凪の頭を撫でて、さて、と呟く。

「俺はもう寝る」
「……早いですね。お風呂は?」
「明日入る」
「そうですか」

ならお湯が勿体無いから私も明日入ろうか――そう考えて、ぐしゃぐしゃにされた髪を整えた。
そして、ソファーに体を沈めてもう寝入る体制に入っている涼に、ソファーの背にかけてある毛布をばさりとかけた。
ちらりと時計を見ると、まだ九時を回ったばかりだ。
凪は少し考えると、やる事が無いので、自室に戻って、自分も涼と同じように眠る事にした。





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