2

ぱち、ぱちぱち。
暖炉から火が爆ぜた。
凪はそれを横目で見ると、手をこすり合わせて、はあ、と息をつく。
この国の冬は日本に比べて寒い。
十二月も半ばとなれば日本もそれなりに寒いだろうが、まだ雪は降らないだろう。
窓の外では雪がちらちらと――否、猛然と吹雪いていた。

「明日は晴れると良いな……」

ポツリと呟いて手近にあったクッションを手繰り寄せた。
そのせいでクッションの上に丸まっていた銀がごろんと床に放り出される。

「あ、ごめん」
「……」

狐の姿の銀は、くりくりとした目を不機嫌な形に変えて凪を見た。
それに苦笑をすると、銀をひょいと拾い上げると、ぎゅうっと――実際はもっと軽くだが――抱いて、ごろんと横になった。
ソファーのばねがぎしっと軋む。
とろんと凪のまぶたが半分ほど落ちているのを見て、銀はぽんぽんと尻尾を使って凪の頬を叩いて、

「寝るんなら火の始末」
「――ん」

凪は一度起き上がるが、しかし、再びぱたりとソファーに沈み、くたっとした声で、

「ごめん……。火の始末、よろしく」

と言って、ソファーの端にたたんであった毛布にもぐりこんだ。
銀は何も言わずに溜息をつくと、一旦ソファーを下りて13、4歳ほどの少年の姿になる。
そして、時代錯誤感のある暖炉に近付くと、木を少しずつ崩して、火をだんだんと弱くしていく。

――パキン。

炭になった木が二つに折れて、高い音を立てた。
それを見ると、立ち上がって電気を消す。
室内が暖炉の弱い灯りで薄っすらと影をつけた。
暖炉の火が消えたことだけを確認すると、銀は再び狐の姿に戻り、とんっと駆る音を立ててソファーに上がった。
凪はすっかり寝入っているらしく、定期的に呼吸する音が聞こえる。
銀は凪に前足を使って器用に毛布をかけなおした。
ほんの少しだけ凪のまぶたが震えたが、まだしっかりと寝続けている。
それを見ると、銀は凪の枕もとにくるんと丸まって座った。
そして銀は自分の尻尾に顔をうずめて、そっと目を閉じた。





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