20

秋も深まってきたころ。
凪は神社の石段の上から三段目の辺りに腰掛けていた。
紅葉したもみじがちらちらと目の前に落ちてくる。

「――ん?」

不意に凪はしたから誰かあがってきているのに気がついた。

「あ」

そして、その人間を知っていることを確認すると、小さく声をあげた。

「藤岡さん」

階段を上ってきたのは、恵だった。
恵は凪の声に気付き、ほんの少し顔をしかめると、階段を上る速さを早くして、凪の目の前にたった。

「どーも」

凪は座ったままへらりと挨拶をした。
恵はそれに返さずに、ただ無言で手に持っていた袋を凪の目の前に突きつける。
袋の中には箱が入っており、『要冷蔵』と言う文字がビニール越しに読み取れた。

「?」
「一応お礼……足の」

顔に疑問符を浮かべる凪に、不満を前面に出した声で言う。
凪はその声色に苦笑をこぼしつつも、軽くお礼を言って受け取った。
そして、

「疲れたでしょう?すこし休んでいきますか?」

凪は、少し肩を上下させて呼吸を整えている恵を見て、クスクス笑いながら言った。





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