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「傘持った?」
家を出ようとした凪と要に、銀は何気ない様子で聞いた。
それに凪は首を左右に振ると、
「いい天気だよ?」
訝しげに言った。
「雨――いや、もしかしたら雪が降るかもしれないから」
「ああ」
「……」
銀の言葉に、要は納得したように呟き、凪は額を抑えた。
「………何が言いたいのかよく解った。でも、ありえないから」
凪は微妙に引きつった笑顔でそう言うと、銀の頭をくしゃくしゃとなでる。
そして、
「ま、もし降ったら傘もって迎えに着てよ」
と言った。
それに銀が少し首をかしげ、数秒考える素振りをした後、
「……命令?」
「いや、お願い」
「解った」
コクリと頷いた銀を見て、凪は笑うと、
「じゃ、留守番よろしく」
そう言って、玄関の扉を閉めた。
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