6
――カツン
甲高い音をたてて、切先がコンクリートにあたる。
凪は目を瞑ると、白い札を目の前に持ち上げた。
「―――呪印、解」
ポツリと呟くと、ジジジと音をたてて札が燃え出す。
否、『燃えた』というより『焦げて』いる。
白い札の黒く変色した部分は、何か文字なのか良く解らないがそんなような形になっていた。
凪はゆっくりと目を開くと、札を手放した。
次の瞬間――、
「!」
直美は思わず息を呑んだ。
札が消えたのだ。
空気に溶けるように、じわりじわりと。
「よし……」
凪は呟くと、紅蓮を横に置いてひょいと人形を持ち上げた。
「話せますか?」
『――うん』
凪が訊くと、人形は少し間を空けて返事をした。
口は動いていない。
それに凪はニッコリと笑うと、直美に向き直った。
「弟さんの幽霊さんです。一時的にこの中に入ってもらって貴方とも会話できるようにしました」
「―――っ、本当に?」
直美は驚いた声で聞いた。
『本当みたいだよ、姉さん』
「――澄、なの?」
『そうだよ』
「――っ」
その言葉に直美は口元を抑えた。
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