5
ギイイイイ―――
廃ビルの屋上。
歪んでいるのか、扉は軋んだ音をたててゆっくりと開いた。
月の光以外の明りが無いそこは、不気味であったが、ある種神秘的にも思えた。
凪はスタスタと屋上の中心まで行くと、ぐるりとあたりを見回す。
そして、
「ここでいっか……」
そう呟くと、手に持っていたものに巻きついている布を取った。
――パサリ
布が落ちると音と共に、凪の手に黒く光る何かが握られていた。
「――刀」
直美が僅かに驚いたような声を上げる。
その声を聞いて凪は乾いた笑いを零すと、
「警察には内緒にしといてくださいね?」
と言って、鞘から刀を抜いた。
凪が『紅蓮』と呼ぶその刀の刀身はうっすらと赤みがかっていた。
凪は完全に鞘からその刀を抜くと、くるりと持ち替えて切先を地面に向ける。
そして、白い何もかかれていない札を出すと、
「要。それ中の人形出して持ってきて」
入り口の所で黙ってみていた要に言った。
ちなみに銀は要の肩に移動している。
要は言われたとおりに中の人形を出して――少しだけその人形を見て顔をゆがめた――凪のところに持っていった。
「じゃあ、そこに置いて」
そう言って凪は自分の前を切先で軽く示した。
要は黙ってそこに置くと、邪魔にならないようにもといた場所にもどっていった。
「さて、始めましょうか――」
凪がそう呟いて、ほんの少し空気が揺れた。
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