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待ってた

今日も雨は続く。お天気予報のお姉さんが天候操ってんじゃないかってくらい1日中雨になるでしょうの言葉は当たっていた。比例して俺のイライラ度も上がっていく。
野球もできねえ先輩にも会えねえ、なんだってんだ。
かれこれもう、1週間になる。
同じ学校にいるっつーのに、先輩とはいつどこにいても声を聞くことさえない。あの人、ホントに学校来てんのかと疑いたくなるくらいだ。俺たちの繋がりがいかに希薄なものなのかを、思い知らされて余計にむしゃくしゃする。

(なんか無性に屋上行きてえ)
 
「おい秋丸、俺 次サボる」
「最近ずっと真面目だったのに」
「しゃーねーだろ、ストレス溜まんだよ」
「でも、サボるって どこでさ?」
「決まってんだろ、 おくじょー」

雨降ってるぞ、と秋丸の声が聞こえたが俺は無視して傘立てからビニール傘を引っ掴んで廊下を足早に駆けてった。なんだか1分1秒も惜しい気がする。
じんわりかいた汗が湿気と同調して気持ち悪い。だから梅雨なんて嫌いなんだ。野球も先輩も俺から遠ざかってくから。

「はあ、…って、おい」
「あ、来たね。ひさしぶり」
「なっ なにしてんすか、あんた」
「失礼ね。君のこと待ってたのよ」

屋上のドアを押し開けるようにして外に出ると、シンプルな赤い傘を差した先輩がこっちを振り返った。駆け寄って、持ってきた傘を開き先輩の隣に並ぶ。
いつからいたんだろうか。スカートの裾は水滴が付きすぎて色が濃くなっている。

「だからってこんな、…」
「君こそどうして こんな日にここに?」
「どうしてって、… 会えるような、気がしたから」
「うん、わたしも。だから待ってた」

先輩はいつもの、子供みたいな顔でニッと笑って見せた。ずいぶん久しぶりのような気がする(実際そうなんだけど)。なぜかその笑みに安心して俺も軽く笑った。

待ってた
(今日はゲームはできないね)
(いいんじゃないすか、こんな日も)
(…そうだね、悪くないね)

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