01

瞼を叩かれるような感覚がある。大方カーテンから朝日が漏れているのだろう、と影へと寝返りをうつ。

せっかくの連休初日なのだからゆっくり寝かせてほしい。昨日は遅くまで大学で発表の打ち合わせをしたあとうまくいってると思ってた彼にフラれるし挙句行きたくもない飲み会に引っ張り出されて疲れてるんだから。友達は慰めのつもりだったんだろうけどあれはただ自分が飲みたかったからに違いない。
そんなに強くもないのに流されて飲んじゃうし今だって思い出せば思い出すほど二日酔いフラグがびんびんなんだから。
これで昨日のわたしが吹っ切れて何か恥ずかしいことでもやっちゃってたら…やっちゃってたらどうしよう?思いつかないけどとりあえず夕飯奮発して1人で美味しいもの食べてやる。

(泣いてなんていられないんだから)

長いため息を吐く。大学ではぜったいにしないことだ。
大学でのわたしは家でのわたしと正反対といってもいいくらい違う。気持ち悪いくらいに理想を塗り固めたのが大学でのわたし。人当たりがよくて常に笑顔で後輩には頼られていて。
対して家でのわたしは休日はお昼まで爆睡したり夕飯は適当にコンビニ弁当で済ませたり、お風呂上がりのプリンが至福のときだったり、そう、言うなればふつう。ふつうの、どこにでもいるような、1人の女だった。
外と中とをわざと隔てたわけじゃない。気付いたらそうなってた。
中身は単なる八方美人で寂しがり屋で、ちょっと人ごみが苦手なだけの、どこにでもいるようなそんなつまんない女。
占い師に聞かなくてもわかる。あなたは平凡で幸せな人生を送るでしょう、って。でも別に、それが嫌ってわけじゃあないのよ。ただ、つまんないなって思っただけ。

「…え、」
「あ…?」

漫画の主人公みたいな忙しない人生はお断りだって、漫画は漫画だからいいんじゃないのって、わたしだって大人だからわかってる。わかってるよ。

僅かな肌寒さに引っ掴んだのはお気に入りの毛布なんかじゃなかった。もっともこもこしていてそれでいてさらさらで、感触はまるで…そう、まるで人の髪のような。
違和感が恐怖に変わる感覚を味わう暇もなく、わたしは睡魔の吹っ飛んだ自分の目をかっぴらいた。
(しかもさっきなんか、低い声が聞こえなかった?)

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