▼ 高瀬

「え?」

ユニホーム姿の高瀬くんはそれはそれはもう格好のよい笑みで首を傾げていた。その先にあるのがわたしだなんてどんなに光栄なことだろうと思う。けれど高瀬くんの「え?」の矛先は、いったいなんだろうか。

「え?」
「えー…と、…え?」

砂をほっぺたにつけたまま高瀬くんは続ける。泥だらけになったユニホームが、彼の魅力を引きたてているような気がするがこの際関係ない。
大きなタレ目できょとんとこっちを見返すのはやめてくれないかなあ。

「準さあん!早く帰ろうよォ」

後ろの方から足音がして振り返ると金髪のふわふわした男の子がいて、わたしを見るなり彼もきょとんとして え?だって(流行ってんの?)。
わたしは肩から提げた鞄をぎゅっと握り締めて高瀬くんを再び見遣る。
彼の視線はわたしに釘付けだ。

「もういいです、わたし帰ります!」
「えっ ま、待って!」

ぐ、と掴まれて引き寄せられる。高瀬くんの焦った顔がすぐ近くにあった。力強い腕に驚いていると金髪のふわふわした子は頬を赤らめてオロオロしたかと思うと部室の方に駆けて行った(まさか言いふらす気じゃないだろうなあ!)。

「さっき、の、を、…もう1回 言って」

途切れ途切れにそういう高瀬くんの顔は真っ赤だった。彼の後ろにある太陽が痛いほどに眩しい。わたしは意を決して背筋を正した。

「さっきの、って、 …練習頑張って下さい?」
「そ、そう!それ!」
「れ、練習…頑張って下さい、」
「ありがとう、…その、も1個いいスか?」
「どうぞ?」

わたしはそんなに変なことを言っただろうか?我が校の野球部の期待の星である高瀬くんに直接練習頑張って下さい、と伝えたつもりだったんだけど(そんなにおかしかっただろうか?)。
シャンと胸を張ると、高瀬くんは小さく咳払いなんかしちゃって(あ、緊張してきた、)チラリチラリとわたしを見てくる。はめられたままのグローブが握り締められて蠢いた。

「好きです、」
「え!」

ワンモアプリーズ!
(野球部では有名だったそうだ)
(エース・高瀬の片思い)
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