▼ 浜田

「はまちゃあん」

情けないような軽く猫撫でのような声を出して俺の背中にガバッと抱きついてくる柔らかい感触。俺はというと、縫い物をしていた手を一旦止めて(こらこら、針が指に刺さるとこだっただろうが)どうしたんだよと首だけをそっちに向ける。
案の定、こいつはぐでぐでしながらそこにいた。

暑苦しい昼休みだった。泉の服のボタンがほつれてるっつーんで、縫ってやっていたところだった。
自分の机に肩肘だけを置いてグラウンドの方を向いてチクチクやってた、そんなときだ。

「はまちゃあーん」
「だから なあに」
「はまちゃんって、年上っぽくないよね」
「ああ、よく言われる」
「でもおっきいから年上っぽい」
「どっちだよ、」

クスクス笑うと背中でも同じように声が聞こえた。暑いけど暑くない、なんか変に微妙な空間だ。
 
「はまちゃん、留年してくれてありがとう」

心境としては大いに複雑ではあったが、この甘ったるい声に不覚にも頬を染めてしまう。

そんな俺の青春真っ盛りの夏
(それで一緒に卒業しようね、だって さ)
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