▼ ティキ

「ねえ、ティキ」
「ん、どうした?」
「今大丈夫?手伝って欲しいんだけど」
「あー、いいよ。なにすればいい?」
「ロードの宿題なんだけど、」
「またかよ…。オレ、字くらいしか書けねぇよ?」
「うん。それでもいいって、ロードが」
「(うん、って…)しゃーねーなぁ…」

ぎ、と音を立てて椅子から立ち上がる。
少し先を行った彼女の後姿を眺めながらオレは部屋から出た。

ほら、例えば。
お前は今、ぜんぜん警戒もしないでオレの前を悠々と歩いてるだろ?まあそれは家族だし別に構わないことなんだけどさ、ここでもしもお前の身体ん中に手ぇ入れてさ、臓器の一つでも掴んだらどうなるんだろうな。

きっとお前は怖い顔して全力で抵抗するんだ。んで、そこでオレがお前を殺さなくたって一生口利いてくんないわけ。ロードとか双子はもちろん懐いてるからお前に味方するわけ。そしたらオレは孤立して、

「…はは、」
「ティキ?」

(なに考えてんだろ、オレ)

「いや、なんでもないよ」

(でも結局なにもしないんだろうな、とかそんなことが楽しい)

(んでいつか、ああオレが殺しとけばよかったってことになるのかな)

さあ、満ち足りた満月は笑う
きっと狼男ってのはこんなふうなもんなんだろうな
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -