▼ 長曾我部

疲れているのかもしれない。なにも言わずにわたしの膝に頭を預けたまま、元親はだんまりを決め込んでいる。いつも強引ささえ感じさせる腕の力も、今は弱弱しさしか伝えていない。
名前を呼んでもどうしたのかと問いかけても応えてくれない。仕方ないな、と吐いたため息も決して呆れたからじゃない。弱ったときにわたしを頼ってくれたことを、不謹慎にも喜んでいるのよ。

躊躇いがちに、その銀髪に指を差し込んでみる。やわやわとしたその感触が気持ちよくて、すぐに躊躇いも消え去る。指で絡め取るように、優しく包み込むように。
自然に緩む口元は、彼には見えていないからそのまま。ああわたしきっと今凄く幸せそうな顔してるのだと思う(ごめんね、元親は弱ってるっていうのに)。
そのとき指先が元親の耳に触れて、彼の肩がびくりと揺れた。

「あ、ご、ごめん」

例の如く元親はなにも応えなかったけれど、居づらそうに身動きを取るとわたしから完全に顔を背けてしまった。もしかして怒ったのだろうか?せっかく眠れそうだった、とか。
その懸念は覗き込んだ彼の耳を見てすぐに消える(あ、だ、だめだ、笑っちゃいそう)(だって元親、耳真っ赤よ)。

「…笑ってんじゃねえ」
「え、笑ってないよ?」
「笑ってんじゃねえか。…クソ」
「ごめんね、びっくりしたんだよね」
「うるせえ、ちょっと黙れ」
「はいはい、ごめんね」
「それから手、止めんな」
「はいはい、元親」

腰に回された腕にぎゅ、と力が籠る。あ、いつもの元親っぽいやらしい手つきだななんてまた笑いそうになって、これ以上彼を怒らせたら可哀相だから必死に唇を結んで。その手触りのよい銀髪を丁寧に撫でてやる。
開け放した窓から心地よい風が吹く。わたしの髪と、元親の綺麗な銀髪を揺らすと、満足気にそれらは消えていった。

確かにあるもの
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -