▼ 七松
久しく手も握っていなかったな、と思って隣りに添えられている小さいそれをぎゅっと握った。もちろんいつも委員会のときに発揮するような力じゃなくてもの凄く手加減した。そうしないと彼女は簡単に壊れてしまうことを、私は知っている。
午後は縁側で日向ぼっこをするのが日課だという彼女に付き添ってくのたまの長屋に忍び込んだ。幸い見付かっても私たちの関係は周囲にバレているので追い返されるようなことはないけれど。
少し眩しげに太陽を見据えるお前が、私は堪らなく好きだ。
手を握ったままごろんと横になると身体中に日光が降り注いで気持ち良かった。なるほど、彼女が日向ぼっこを気に入るのも頷ける。そっと目を瞑って息を長く吐いた。
「こへいた、…起きて、こへいた」
「んー…ん、?」
「もう夕方だよ、風邪引いちゃうから起きて。ね、?」
「ゆうがた?」
がばっと起き上がると確かにさっきまで燦燦と輝いていた太陽が橙に変わっていた。すっかり夕方だった。困ったように微笑む名前が私を覗き込んでいる。
「こへいたが余りにも気持ちよさそうに寝てたからつい…ごめんね、授業サボらせちゃった」
ちろっと舌を出してそんなこと言うもんだから無意識に頬が火照ってしまった。だって可愛いんだもん。
怒るに怒れなくて(っていうか怒る気なんて更々ないけどさ、)まだ覚醒しない頭をもたげる。少し寝すぎたかもしれない、意識がぼおっとしている。
でもなんか凄い夢見がよかったような気がする。なんとなくだけど。
「…あ、」
繋いだ手はそのままで
(しかも ひ、膝枕まで…)
(ああなるほど、通りで)
081223