▼ ↑カノンノとエステル
どくどくと脈打つ他に痛む胸が煩わしくて1人で討伐依頼ばかりをこなしていた。途中でファラやルカが同行を申し出てくれたけれどやんわりと断って、また今も船を出たところだ。
態とダークボトルをかぶってわき目も振らず走り出す。
「##name_2##!」
呼ばれて振り向くと揺れる桃色がぼんやりと視界に映って、次いで後ろから鋭く激しい衝撃が襲う。
「##name_2##…!」
何がどうなったのかもわからないうちに、すぐ後ろで眩しい輝きを放つ聖なる槍が降り注ぐ。それはオレ自身が地面に叩きつけられるのとほぼ同時だった。
肩が酷く熱い。手を当てるとどろりと濡れるのがわかった。
ぱちぱちと火のはぜる音が耳に心地よかった。ぼんやりと目を開ける。桃色が揺れていた。
カノンノ?そう呼びかけようとして、はっと口を噤む。我ながらよい判断だと思った。
「気が付きました?」
オレの顔を覗き込むと心底安堵したようにエステルが笑う。どうしてオレは彼女をカノンノだと思ったんだろう。
「ん、オレ…」
「ごめんなさい、わたし、##name_2##が心配でご一緒させてもらおうと名前を呼んだんです」
「あ、ああ」
「そのときに、背中を狙われてしまって」
「なるほど」
「本当にごめんなさい、不注意でした」
今にも泣きだしてしまいそうな顔でエステルは頭を下げた。そのときに同じく桃色の髪も揺れる。
「怪我、治してくれたんだろ?もう痛くないよ」
「でも…!」
「いいんだ、オレちょっとおかしかったし」
ゆっくりと上半身を起こして額に手を当てる。脳の奥の方に濃く熱い靄でも立ち込めているような気分だったんだ。痛い目に遭ってすっきりした。
「なにか、あったんです?」
遠慮がちに傾げられた首、そしてやはり柔らかく揺れる桃色の髪。だけどなにか物足りない気がした。
「エステル、綺麗な髪だな」
桃色の髪は艶やかで柔らかそうで、守ってあげたくなる。つい触れてみたくなる。抱き寄せて閉じ込めたくなる。
エステルは一瞬驚いたような顔をしてから、また泣きだしそうに眉間を寄せてしまった。ただし今度は笑みも一緒に浮かべられている。小さく息を吸って、彼女は目を閉じた。
「それは、彼女に言ってあげて下さい」
すとん、
(ああ、だから触れたいと思ったのは、)