▼ アレクセイ
あの銀色が、懸命に掛け寄って呼べば振り向いてくれるあの銀色が、わたしは好きだったのに。
「アレクセイさま」
「お前のような使えん道具はもう要らん」
座り込んだ床はとても冷たいはずなのに、どうしてか感じられない。それくらいわたしの両手はカタカタと震えていた。
「どこへなりとも行くがいい」
そのとき不意に、彼の唇が弧を描いたような気がした。すぐに漆黒がわたしたちの間に入り込んでしまって確認はできなかったけれど。
(待って)
ユーリが振り上げた刃が彼を引き裂く。その瞬間だけは皮肉にも、はっきりと見てしまった。
(待って、)
あの銀色が、大好きだった銀色が、ついに見えなくなってしまった。
「アレクセイさま」
彷徨う