▼ レイヴン

夜、男性陣に宛がわれた部屋に音もなく忍びこんできたのは彼女だった。なんとなく寝つけないなと(リタっちに言わせれば昼間に寝すぎ!なんだろうな)寝返りを打ったら彼女はいたのだ。驚きの余り飛び出そうになった悲鳴をやっとこさ呑み込んで、辺りを見渡す。
カロルくんは変わらず爆睡していたし、こちらに背を向けている青年もぴくりともしていない。わんこも顔を埋めて大人しく眠っているようだった(いや、こいつに限ってはわかってて敢えて、ということもあるが)。
現状の変わりのなさにほっと胸を撫で下ろして、未
だドアの前で棒立ちの彼女にちょいちょいと手招きする。その合図に、彼女は愛らしい動作で近寄って来て、迷いもなく俺の首に腕を回した。ぎゅっと縋るようにしがみ付かれて悪い気はしないので、その小さな背にやんわりと腕を回した。
彼女も俺と同じように眠れないのだろうか、それとも怖い夢でも見たのだろうかと思考を巡らせながら、彼女と共に身体を横たえ毛布を被る。

暗闇の中、彼女はたった一言愛してると言ってくれと懇願した。だからすぐに愛してると呟いた。けれどそれは俺も彼女に頼みたいことだったので、俺も同じように愛してると言ってくれと哀願した。
彼女はまるで酒にでも酔ったような瞳をして、その唇から愛を囁いた。まるでシャボンのように消えてしまう、儚い言葉を。

補う
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