▼ 鬼道有人
わたしの前でこんなに無防備に眠れるんだ、とソファの上で寝息を立てる鬼道さんを見て思った。誰にも心を開かず、彼も信じず、なオーラを全身から醸し出していたあの鬼道さんが。
雷門のチームに入ったことは、どうやら彼には大いにプラスだったようだ。
宛がわれていた本をいったん机に置いて、わたしは毛布を引っ張り出してきた(わたしが以前寝たフリをしたときに鬼道さんがこうしてくれたように)。
両手を広げただけでは余るその柔らかい毛布をなるべく丁寧に彼の身体に掛けた。慎重に、起こしてしまうことがないように。
それにしても可愛い寝方だな。縮こまり自分自身を抱きしめるような体勢を見ていると、幼い頃の孤独が伺えなくもないが(ああ、ドレッドだから仰向けにはなれないのか、な)。
ソファの下に座り込んで鬼道さんの寝顔を眺めていたら、不意に触れたくなった。この年齢の子にしては珍しいドレッドも、可愛いおでこも、赤い瞳を隠すゴーグルも、いつも真一文字に引き締められた唇も。
「でも怖いんです、鬼道さん」
わたしはあなたを裏切り者だとは思ってない。それは帝国のみんなだってそう。あなたの気持ちは、少しはわかってるつもり。だから、だから余計に怖いんですよ鬼道さん。わたしはあなたには触れられない。触れてはいけない。
これはわたしの勝手なルールなんですけど、ね。
あなたになにが一番必要で、なにが一番不必要が、わたしにはわかる。
(だからどうか今だけ)
「鬼道さん、」
(それは、世界で一番)
(優しい響きのおと)
囁く