▼ シルバー

珍しく甘い雰囲気になったなと思って、乗せられるまま瞳を閉じた。下唇をなぞるように舐められて背筋がぞくりとした。うあ、だめだ、意外とキス巧くて声出そう。手の上で転がされるようなわたしをほくそ笑む彼の表情が手に取るようにわかる。

(でもわたしは、そうじゃなくて)

物足りなさに薄っすらと目を開けるとやっぱり彼はニヒルな笑みを浮かべてわたしを見ていた。まるでわたしの要望なんてわかってる、みたいな顔だ。

「その物欲しそうな顔、やめろよ」

髪を一房取られて、そのときに首筋を掠めた首筋が粟立つ。息を呑んで肩を竦めるとそっと指が伝って来た。

「痕、残ってるな」
「シルバーが強く噛むからでしょ」
「噛んで欲しそうな顔してただろ」
「でも噛んで欲しいなんて言ってないもの」
「ずいぶん気持ちよさそうな顔してたのにな」

つつつ、と恐らく歯型のついた部分を指の腹でなぞられた。比較的体温の高く保たれたそこに触れる彼の指はまるで氷のようだった。

「うあっ、冷たい、」
「お前は痛くされるの好きだよな」

剥き出しだった肩に鼻先をくっつけると、なんの前触れもなく歯を立てられた。じわじわと食い込んで来る犬歯にゾクゾクする。意味のない母音が堪え切れず漏れた。

「や、シル バー…!」
「いいな、その顔」

支えきれなくなった頭を彼の胸元に預ければ、今日もまた瞳を閉じることしかできなくなる。

(望むのはただ、)
(もっと強く、と)

噛む
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