▼ シルバー

※HGSSライバル
ワタルさんの後を追うようにイブキさんが駆けて行って、そこは再びシンと静まり返った。遠くの方で僅かに水の跳ねる音が聞こえた。
足元で今にも倒れてしまいそうなパートナを抱きかかえて、労わるようにそっと頭を撫でてあげる。ありがとう、あなたのおかげで勝てたんだよ。理解してくれたのか目を細めて小さな鳴き声が返ってくる。すぐにポケモンセンターに連れて行ってあげるからね、とボールを向けた。

「シルバー、」

彼はそんなわたしを見ていた。じっと観察するような視線。居た堪れなくなってどうかした?と聞くとハッと我に返ったのか慌てて背を向けられる。

「さっさと行け!ポケモンの体力がやばいんだろうが」
「あ、うん、そうだね」

握りしめていたボールを指で撫でると、彼の足元にいる彼のゲンガーと目があった。初めて会ったときはゴースだったのに、強くなったんだね。

「ねえシルバー」
「なんだ」
「シルバーすっごく強くなってたね。わたしきっと次に戦ったら、危ないかも」
「ふん、それでもチャンピオンか。…ま、その日は遠くないがな」
「シルバーのポケモンもね、生き生きしてて、シルバーに愛されてるんだなあってわかったし」
「ばっ…!恥ずかしくないのか、」

僅かに頬を染める彼の大きな声に驚いたのかゲンガーがびくりと揺れる。それに気付いた彼の申し訳なさそうな表情を見て、わたしは緩む口元を押さえられなかった。最初はあんなに、あんなにひどく怯えた目を仮初の強さで覆い隠したような表情しかしなかった彼が。

「だってほんとのことだよ」
「いちいち恥ずかしいんだよおまえは、…とっとと行け!」
「はいはい、…じゃあ、またね。シルバー」

「…おい、」

ゲンガーに手を振って踵を返す。数歩歩いてから あ、なみのりしなきゃと腰辺りのボールを探ったとき、シルバーの小さな呼びかけが聞こえた気がして首だけを向ける。彼は俯いたまま、耳を赤く染めていた。

「お前は確かに強い、それは認めてやる。仕方なくだけどな、…けど次は俺が勝つ。お前には俺だけが勝つ」

だからお前は俺以外の誰にも負けるな、と言われたような気がした。

「またね、シルバー」
「ああ」

まるで鴛鴦の契り

(わかってる、)
(これは2人の約束)
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