天葵
「葵の何それ?一口ちょーだいっ!」
「もー、しょーがないなー。一口だけだよ?」
「ありがとー!」
「「「…………」」」
「ん?信助達どうしたの?」
「あのさぁ、天馬…」
昼休み、天気が良かったので天馬達1年生組は屋上でお昼を食べていた。
そんな葵が期間限定で購買で売っているジュースを取り出した。
そして冒頭に至る。
「…天馬達は気にしないのか?二人で何かを分けあって食べたりする事に」
皆同じ事を思っていたがあまりにも二人が自然にしていた為、誰が言おうか迷っていた時、それを見かねた剣城がため息を吐きながら皆を代表して聞いた。
すると天馬達は一瞬呆気にとられたかと思うと顔を見合せ、同時に吹き出した。
「あははっ!!なんでそんなの気にすんの?変な剣城ー」
「ほーんと。変な剣城くん」
二人はお腹を抱えて笑っている。
変なのは二人の方だって!!と叫ぶのを抑えるのに皆必死だった。
中学生となれば思春期真っ只中。
少しは男女間で意識はするもの。
しかしこの二人にはそういう常識が通用しない。
まぁこの二人ならしょうがないないか、というのが皆の見解だった。
しかしまた別の日、また違う期間限定のジュースを取り出した葵から天馬が当然の様に一口貰った時だった。
「なんかさー、こういう期間限定のヤツって不思議な味が多いよね」
「そう?私は美味しいと思うけど。あ、狩谷もいる?」
「え?」
狩谷がまたいつものかぁ、と少し遠い目をしながら二人を見ていた時だった。
「え…と、それは…」
「だってこっち見てたから。飲みたいなら一口位あげるよ?」
「え、でも…」
「だめっ!!」
「え?」
「え?」
「え?」
葵が狩谷に勧めていると天馬が急に大声を出した。
葵達も驚いたが本人が一番驚いているようだった。
「…どうしたの天馬、そんな急に大声出して…」
「俺もわかんない…けどなんか狩谷が葵のジュース飲むの嫌だと思ったら口が勝手に…」
「…何それ、変な天馬」
「…ホントだね」
二人共、何故天馬がそういう行為をしたのか全然分からないようだった。
「…って、あれ、狩谷?」
見渡すと狩谷は既にその場から離れていた。
「悪いけど俺はいーや。天馬くんにあげなよ。気に入ったみたいだしさ」
「え、そう?」
「じゃあね」
狩谷はそう言うと他の1年の方へと走っていった。
「変な狩谷」
「だね」
(バカップルは余所でやってくれ!!)
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