ルーン親子


「父さんはさ、再婚…とか、しないの?」
「え?」

父さんと一緒に暮らすようになってから少し経った後、僕はずっと思っていた疑問を口にした。

「…フェイは…母親が欲しいのか?」
「そういう訳じゃないよ。…ただ、ちょっと気になっただけ」
「そうか…」

父さんは静かにそう言うと飲んでいたコーヒーをカチャンとテーブルに置いた。
怒らせた?、と思っていると父さんの大きな手が僕の頭を撫でた。

「父さん?」
「本当は…お前の為を思うなら私は新たな妻を迎えるべきなのだろうな。…せっかくこうしてお前と暮らせるようになったというのに仕事に追われる毎日でなかなかお前との時間を作ってやる事が出来ず、結局お前に寂しい思いばかりさせている。…もし母親が居ればお前にそんな思いなどさせなくて済むのだろう」
「………」

僕は黙って父さんの言葉を聞いていた。

「だがすまないな、フェイ。黄名子は私にとって最初で最後の女性なんだ。黄名子は私の初恋の相手で、私が唯一愛した女性なんだ。…黄名子以外の女性だなんて、私には考えられないんだよ」

すまないな、と父さんは再度謝ると僕の頭を優しく撫でた。

そんな父さんを見ていると、本当に僕の事、黄名子の事を考えているんだって事がわかった。
けど僕だって、

「…僕だって、母さんは黄名子だけだよ。…黄名子以外の母さんなんていらない」
「…そうか」

僕が迷う事なく父さんの目を真っ直ぐに見つめながらそう言うと父さんは泣きそうになりながら笑った。


(君の代わりだなんて、何処にもいないんだ)

(だからこそ、君がいとおしい)


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