錦水


いつも通りの放課後。
天馬、剣城、神童の三人がいない事にもだいぶ慣れた、部活の時間だった。

しかしそこにある人物がいない事に水鳥が気がついた。

「なぁー、錦知らねー?」
「錦?…あぁ、確か裏庭にいた気がするけど…」
「裏庭…?…サンキュ」

水鳥は倉間からそう聞くと裏庭へと向かっていった。
倉間はそんな水鳥を心配そうな眼差しで見つめていた。

「倉間?ちゅーかどしたの?」
「いや…錦大丈夫かなって」
「?」
「ほら、アイツ化身アームドもミキシマックスも出来るのに代表入り出来なかっただろ」
「あぁ…でも大丈夫じゃない?」
「はぁ?」
「瀬戸がどうにかするっしょ」

浜野は意味ありげににんまりと笑った。

(…いた)

錦の姿はすぐに見つかった。
1人でポツンと座り込んでいる錦の背中は頼りなかった。
水鳥はそんな錦に内心苛立ちながら錦に近づくと頭をべしっ、と叩いた。

「いたっ!…って、水鳥!何するぜよ!」
「お前が部活来ないからだろ。何してんだよ、こんな所で。」
「………」
「…代表入り出来なかった事に拗ねてんのか」
「…っおまんに何が分かるんぜよ!」

ずっと黙っていた錦だったが水鳥の一言で声を荒げた。
しかし水鳥はそんな錦を意に介した様子もなく、小さくため息を吐くと錦と背中合わせでその場に座り込んだ。

「水鳥…?」
「…悔しいのは分かるさ。けどな、それで落ち込んで拗ねてればお前は代表入り出来るのか?」
「!」
「あたしの知ってり錦龍馬はもっと諦めの悪い奴だと思ってたけど…違ったのか?」
「―――、」

水鳥がチラリと錦を横目で見ると錦は言葉を失っていた。
しかし口元をキュ、と引き締めると空を仰いだ。

「そうぜよ…こんな風に落ち込んでてもサッカーは上手くならんぜよ。わしも、もっともっと練習して天馬達に負けないくらい強くなってみせるぜよ!」
「…そっか、」
「水鳥!ありがとうな!」
「…あたしはなんもしてないよ」
「んな事ないぜよ!水鳥のおかげで吹っ切れたぜよ!」
「あっそ…んじゃ、とっとと部活行くぞ」
「おぅ!」

二人は腰をあげるとグランドへと走っていった。


錦はもう、立ち止まる事はなかった。



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