アス黄


―……レイ

…誰だ……?

―…スレイ

あれ…この声は…

―アスレイっ!

私が頭に響く声の持ち主に気付くと急に目の前パァッと明るくなった。

「黄名…子…?」
「久しぶりやんね、アスレイ」

頭上から緩やかに降りてきたのは最後に会った時と変わらない、美しい女性の姿をした黄名子だった。
1つ違うのはその黄名子には羽が生えているという事。
私は慌てて黄名子を抱き抱えた。

「なん…黄名子、一体どうして…というかその羽…」
「これは夢やんね、アスレイ」
「夢…」
「流石にうち一回死んじゃってるから現実で会うのは無理だけど夢の中でならって、神様が許してくれたやんね」
「けど、どうして…」
「ずっーと、1人で頑張っていたアスレイにご褒美やんね」

戸惑うアスレイに黄名子はにっこり笑った。

「褒美と言われても私は別に…」
「フェイの事、ずっと見守っててくれたでしょう?」
「!」
「ずっと、見てたやんね」

全てわかってる、という風に黄名子は微笑んだ。

しかし逆にアスレイの表情は沈んだ。

「アスレイ?」
「…だが私は絶対にしてはいけない事をあの子にしてしまった…私はどう償えば…」
「それでもアスレイがフェイの事を守っていたのは事実やんね。だから…ありがとう」
「!」
「それに、まだまだ時間はあるんだしこれからフェイと沢山思い出作っていけばいいやんね!大丈ー夫。フェイは優しい子やんね。最初は戸惑う事もあるだろうけどちゃんとアスレイの気持ち、フェイに届くやんね!」
「…君は本当に凄いな…」

黄名子がアスレイを優しげな目で見つめているとアスレイは自分の心が軽くなっていくのがわかった。

フェイにした事は決して許される事ではないとわかってる。

それでも黄名子に言われるとなんだか気分が明るくなった。

アスレイはお手上げというように肩をすくめた。

「ふふっ、アスレイ、これからもフェイの事、頼むやんね」
「あぁ、勿論だとも」
「でもその前に…」
「?」

黄名子は言葉を切るとアスレイの頬にそっとキスをした。

「黄名…」
「また会えて嬉しいやんね!」
「!…っあぁ!私もだよ!」

アスレイは泣きそうになりながらも微笑みを浮かべると黄名子を強く抱きしめた。

夢だとわかっていたが十数年ぶりに触れた愛しい人は昔と変わらず温かった。


(こんな風にまた笑いあえる日をずっと望んでた)



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