行っちゃだめ4

 
「………ッ」

尿意の波が何度も襲い掛かり、その度に立ち止まってなんとかやり過ごす。
こんなに辛いならもうさっさと出してしまおうかとも思ったが、羞恥心やプライドがそれを許さない。

亮介はというと服を選びながら平然と「これどう?似合う?」とか言ってくる。
そんなこと聞かれても俺の頭の中は決壊寸前の膀胱のことでいっぱいだ。
どうでもいいから早くしてくれ。
早く決まれば早く帰れる。
早く帰れば漏らさなくてすむ。




しかし決壊の時は確実に近づいていて。

「……っ…!」

じわっと溢れた感覚に思わず座り込んでしまった。
必死に踵を押さえつけ、なんとか止める。

「もしかして、出ちゃった?」

ニヤニヤしながらきいてくるこいつを今すぐ殴りとばしてやりたい。

「…出てねーよ!…ッ」

なんとか立ち上がり強がってみせたものの、すぐに強い尿意が押し寄せてくる。

「出しちゃえば楽なのに」

「っるせ…ぁ…」

また座り込んでしまいそうになり、咄嗟に目の前の亮介の腕を掴む。

「もう無理…出る、まじで…」

「……………」

亮介は何も言わず、いつもの笑顔で俺を見ていた。

「ト、トイレ…行か…」

「行っちゃだめ」
 
「…ぁ…ぁあ…」

シュー…という音が聞こえ、下半身が暖かくなる。

我慢していたものを出す気持ち良さと、どんどん濡れていく気持ち悪さで何ともいえない気分だ。


我慢できなかった。
とうとう漏らしてしまった。

そう思い恥ずかしさで俯いているとスッと手が顔にのびてきて、顎を捕まれ上を向かされた。
ばっちり亮介と目が合い、更に羞恥心が増す。

「や、やめ…っうわ!?」

と、突然亮介は俺の腕を引っ張り歩き始めた。
まだ出している途中なのに歩かされ、そんなに動くと隙間から漏れるんじゃないかと不安になってしまう。

「ちょ…っあ…」

連れて来られたのは試着室。
わけが分からないまま試着室に放り込まれ、同時に亮介も入ってくる。

「な、なに…っんん!?」

カーテンを閉めた瞬間、いきなり亮介がキスをしてきた。
しかも激しい。

「ん…はぁ…っ」

キスをしながら全て出し切った脱力感で身体に力が入らない。
亮介に支えられながら半ば強引に舌を絡められる。

「っはぁ…」

やっと口を離してもらい、ヘナヘナとその場に座り込んだ。
座るとグジュッと湿った感じがして気持ち悪い。

「きもちわる…うわっ」

もぞもぞと腰を動かしていると、また腕を引っ張られ試着室から連れ出された。

「なに、ちょ…なんだよ」

「帰る」

「…は?」

「和也のせいで理性とびそう」

「は!?」

「早く帰って早くシよ?」

「いや、ちょっとその前に、その…濡れてるの気持ち悪いからトイレに…」

「行っちゃだーめ」





‐END‐

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