風呂にしよう1
俺の飼い主車がマンションの駐車場へ入って来るのが窓から見えた。
やっとだ。
やっと帰ってきた。
しかし、これからが1日で最も辛い時間となる。
俺は今一度気を引き締め、主人を迎えるため玄関へ向かった。
「お帰りなさい…」
「ただいま」
これが俺の飼い主。
若くして大手IT企業の社長を勤めている若桜孝之だ。
1年前、俺は孝之に拾われた。
そしてなぜか、孝之が仕事に行っている間に掃除や洗濯、食事の支度などの家事全てをすることを条件に、このマンションで一緒に暮らしても良いと言ってくれた。
「食事にする?それともお風呂に…」
「食事にしよう」
その答えを聞き俺はグッと足に力を入れ、溢れそうな欲望を押さえ込む。
「た、孝之…」
住まわせてもらうための条件は家事をすること以外にもう1つある。
「トイレ…」
「食事だ」
それは、排泄も射精も孝之の許可無しでしないこと。
「うぅ……」
仕方なく俺は晩御飯の支度をするためキッチンに向かう。
朝、孝之が出勤する前に1回トイレに行かせてもらうので大きい方は大丈夫だが、小の方は孝之が帰って来る頃にはいつも限界に近い。
足をもじもじと動かしながらキッチンに立ち、昼の間に作っておいたカレーを温める。
機嫌が良い時は食事よりお風呂が先でお風呂で出させてくれたり、素直に言うとトイレに行かせてくれたりするが、今日はそうはいかないみたいだ。
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