できるよね6

 
教室を飛び出た俺は教室が並ぶ廊下を駆け抜けて階段を上がった。
ここを上がれば理科室や音楽室などが並ぶ階だから人も少ないはずだ。

とにかく一人になりたくて唇を噛み締めながら、階段を1段とばしで駆け上がる。

「…ッはぁ…はぁ…」

思った通り、上の階には誰もいなかった。
どこか入れる場所は無いかと辺りを見回す。

空いている教室ばかりなので適当なところに入ろうかと思った、その時。

「うわっ!!」

いきなり腕を捕まれ後ろに引っ張られ、バランスを崩し倒れる…と思ったが気づいたら暖かいものに包まれ体を支えられていた。

「亮介…」

振り返ると俺を包んでいたのは亮介で、息を乱しながら俺を抱きしめている。
走って追いかけて来たんだろう。

「どこ、行くの?1時間目は、普通に、教室で授業だよ?」

後ろから強く抱きしめられ、乱れた息をかけられながら耳元で話された。

「ん…ッ」

それだけでゾクゾクと快感が生まれるが、その快感を振り払うように亮介の身体を押し離す。

「抜くんだよ!俺だけ我慢してバッカみてぇ!!」

本当に、バカみたいだ。
軽く交わした口約束なんか真面目に守っちゃって、俺だけこんな辛い思いして。
そうだよな、普通は抜くよな。

完全に裏切られた。
亮介はあの時言った俺との約束なんかどうでもよかったんだ。
ドSだし変態だけど俺の約束は守ってくれると信じていた。
我慢が辛いとかいうことよりも、今は裏切られたということの方が辛い。

泣きそうになりながら突き放そうと手を突き出したが、その手はがっしりと捕まれ逆に強い力で引き寄せられた。
手加減してないみたいで捕まれたところに痛みが走る。
振りほどこうともがくが、全く離れず痛みだけが増していく。

「ッてぇよ!離せって言ってんだろ!!」

苛立ちに任せてバッと我武者羅に手を振ると、カシャっという軽い音と固い物に当たる感覚がした。

「あ…」

気づいた時には亮介のメガネが床に吹っ飛んでいた。
しかもレンズにヒビが入ってるっぽい。

「いや…その…わりぃ…うわっ!」

空き教室の扉を壊しかねない勢いで開けたかと思うと、捕まれていた手を強く引っ張られ放り投げられた。

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