2012クリスマス(彼氏シリーズ)3
せっかくの休日、せっかくのクリスマスイブだったのに全く楽しくなく、軽く苛立ち悲しくなった。
こんなことなら家でグダグダしてた方がよかったな。
そんなことを考えて俯いていた時だ。
「降りるよ」
電車が駅に停車しドアが開いた瞬間、グイッと手が引っ張られた。
「ちょ、え?」
ここはまだ俺たちの最寄りの駅じゃない。
なのに亮介は俺の腕を引いて電車をおりてしまった。
「なんだよ、まだ着いてないぞ?」
「行きたいところがあるんだ」
「はぁ?」
正直言って俺はもう人混みにうんざりしていたし疲れたし寒いしで早く帰りたかった。
しかも、亮介の行きたいところといったらどーせホテルとかそんなとこだろう。
「俺もう早く帰りたいんだけど」
「まぁまぁ」
俺の言葉は軽く流され、引っ張られるまま改札を出る。
そんなに大きな駅ではなく、おりた人は少ない。
駅前は賑わっていたが飲み屋とかそれぐらいしか無かった。
「なぁ、どこ行くんだよ」
「いいからいいから」
亮介は俺の手を離さないまま、ゆっくりと歩き始めた。
少し歩くと店もなくなり、街灯だけが寂しく光っている住宅街になってきた。
歩いているのは俺たちだけで、さっきの人混みが嘘のようだ。
「なぁ…いつまで手繋いでんだよ」
「いいじゃん、人いないし」
「………」
会話はそこで途切れ、静かな住宅街には俺たちの足音だけが響く。
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