◆ 頂き物 世界の中心はいつだって 2014/01/30 21:12
「オミとトキオはいつからそんな仲良くなったんだ?」
担架に乗せられ運ばれていく複数の死体を見ながら、俺は服に付いた埃を叩いていたオミに聞いた。
「は?気持ち悪い事言わないでくれる」
「だってさっきの行動は打ち合わせに無い動きだったろ?」
リーダーとなるべき最後の敵を倒した後、俺たちの背後から不意を突いて敵が攻撃を仕掛けてきた。
その敵はミーティング時の情報には存在せず、急な出来事に俺は向かってきた刃に即座に反応出来なかった。
しかしオミとトキオは瞬く間に反応を示しその敵を無力化したのだ。
俺はただ突然向かってきた刃に、2人の息の合った動作に、ただ驚き見ている事しかできなかった。
「一緒に戦っていれば仲間の動きぐらいある程度予測がつくからじゃないかな」
「そうかもしれないけど・・・」
「まぁ他のメンバーもそうだが、オミは特に先を読んで動ける。今回みたいにイレギュラーな事が起きても、的確な場所に確実に来てくれるから便利な奴なんだ」
任務の事後処理を別部隊の隊長に引き継ぎしていたトキオが、こちらに向かってきながら言った。
「人を孫の手みたいに言わないでくれる。動かなければ殺されるだけだから行動しているだけでしょ」
「その判断が出来るのと出来ないのではこういう場では大きい事だよね〜」
トキオは誰かを非難しようとして言っているのでは無いと思う。
J部隊に所属しているメンバーは個々に秀でた能力がある。
だからこそ出来る事と出来ない事の差が大きくあり、それぞれの特徴があり支え合えるからこそ俺たちJ部隊は成り立っているのだと思う。
故に緊急時にはトキオとオミの様にフォローしあえる関係なのだと思っている。
でもそれでも、モヤモヤとした何かが心に渦巻いてきてしまう。
先程の連携がオミと俺とではトキオと俺とでは同じ速度で無力化出来ただろうか?
すぐさまに敵の奇襲に反応出来なかった俺とも・・・
「俺はこの人じゃ無くても、今日みたいな事があったら同じ行動をするんだろうね」
「え?」
「奇襲をかけてきた敵が真っ先に誰を狙っていたか気付いてる?」
「わからない」
記憶を辿っても最初の敵を殲滅し終わった現場に突然背後から新たなる敵が奇襲をかけてきた。
その敵にトキオとオミが素早く反応し、一気に無力化した事ぐらいだった。
「おい、オミっ」
「言わなければこの人、悩み続けるんじゃないかな。俺は構わないけど」
「どう言う事だ」
2人の会話が見えない。
「俺たちはタマキを守りたかったんだ」
トキオは溜息をつきながら言った。
「え?」
「あの敵にタマキよりも早く気付いたのは、俺とオミがタマキを見ていたからだ」
「そしたらイレギュラーな敵が君を襲いにかかってきた。だから俺とあの人で倒しただけだよ」
「なんで2人は俺を見ていたんだ?」
「名目上のリーダーは俺になっているが、戦闘時誰が中心になり戦っているか気付いてるか?」
「お前じゃないのか?」
「タマキだよ」
「え?」
「やっぱり気付いてなかったんだね」
今度はオミの溜息をついた。
「ちょっ、えっ!?どう言う事だ?」
「過去の戦闘時の動きを思いだしてみなよ」
オミにそう言われ、記憶を思い返す。
ミーティングの打ち合わせでは確かにトキオが中心で戦闘隊形を組まれている。
そして現場での戦闘は・・・
「あれ?」
「分かったか?」
「俺が中心に居る」
「ここのメンバーって無意識なのかね。最初は驚いたよ。どんなに打ち合わせしても、最後の敵を倒す瞬間陣形が君を中心で動き出すんだ」
「だから最後の敵を倒した後、俺とオミはタマキを見ていたんだ」
「それで、君の背中を狙った急な襲撃があっても対応が出来たって事」
「2人は俺を守ってくれたんだな。ありがと」
「君が無意識としても、リーダーとして君が最後に敵を倒さなければこの人が襲われていただけだよ」
オミはトキオを見て言った。
「だからこそ余計にタマキを守らなければって思ったんだ」
「気付かなかったとはいえ、リーダーの場所奪ってたんだな。ゴメン」
「お前が育てたJ部隊だから、俺がリーダーとなってもこうなる事は最初から分かっていたさ」
トキオは気にしないと笑った。
「さて、疑問は解決したかな?」
オミは俺の顔を覗きこんできた。
俺の気持ちが沈んでいくのがバレていたのだろう。
「ありがとう」
「落ち込まれたままだと今後の任務に支障が出ると思ったからね」
「それにオミが俺を守ってくれたの嬉しかった」
「君じゃ無くても仲間は守るよ」
オミは一瞬遠くを見る顔をした。
もう居ない彼を思い出したのかもしれない。
そして何も言わず背を向けると諜報班の待つワゴン車に向かってしまう。
「それでも、ありがと」
返事をするように手を軽く上げてくれた。
「さてタマキ。引き継ぎも終わったし俺たちも帰ろうか」
現場に背を向け俺とトキオもワゴン車に向かう。
トキオは任務が終わったと言う様に腕を伸ばし軽いストレッチをしながら一緒に横を歩く。
「お前とオミは俺が知らない所で仲良かったんだな」
「ん?何処を見てそう言ってるんだ」
驚いたように返事をするトキオが少し面白い。
「俺以外の実働部隊の3人は俺と同様に、最後の瞬間は俺をリーダーとして見ているという事に気付いてないんだろ?」
「無意識だから面白いと思ってるよ」
「それをお前とオミが気付いていながら指摘をするんじゃなくて上手く任務が遂行できるようフォローしていてくれたんだろ?それって、お前とオミが仲良くなくちゃできない事だと思うんだ。なんか、嬉しいな」
俺は先にワゴン車に乗り込んでしまったオミと、トキオを見ながら言う。
「タマキには負ける。お前が本当にこの部隊のリーダーだと改めて思わされるよ」
トキオは眩しそうに目を細めて俺を見てくる。
「え!?なんで?」
「ほら、行こう。みんなが待ってるぞタマキ」
いつの間にか立ち止ってしまっていた俺の背中をトキオは歩くように促してくる。
俺は背中を押されるまま歩きだしたが、きっと先程抱いた俺の疑問には答えを教えてくれないんだろうなと感じながらも、見上げたトキオが楽しそうに笑っていたので知らなくても良いのかもしれないと思った。
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「ミッションで、打ち合わせなしなのに見事なコンビネーションを見せてくれたトキオとオミを見て凹むタマキください」って呟いたらまなべさんが拾ってくれましたー!
いいでしょ!←
そうなの、J部隊はタマキのチームなの。
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