続きだけど終わるかどうかって終わりませんでした。   2013/09/09 21:09

「面談やるぞ」
今日も全員無事に任務を終えることができた。
ミーティングルームに戻って一息ついたところで声を掛ける。
「りょーかい」
オミがはまっているオンラインゲームの話で盛り上がっていたようだ。
中座して悪い、というようなジェスチャーをしてこちらへ来る。
「ここでじゃないぞ」
席に座ろうとするのを止める。
「別にここでいいよ。今更聞かれて困るような事もないし」
「形式の問題だ」
「あ、そう。どこでやるの?」
「バンプアップだ」
「ここと変わらないじゃないか。部外者が入ってくる分より悪い」
「お前と二人きりになる精神的苦痛に耐えられん」
「仕事しろよ」
「今日に限って他に適当な部屋が空いていないんだ」
「ふーん。うちでも良いけど」
「家庭訪問は上官二名立ち会いの上で別途実施予定だ」
「そんなのやるの? まあいいや、良い場所がある」
「そこでやろう。外か?」
立ち上がってミーティングルームから出るよう促された。
「まあね。部外者は入ってこないから安心して」
先に立って先導するように歩いていく。
「つまり、完全犯罪は容易ということだな」
「そうそう、誰にも立証できない。って、二人で出掛けたってこれだけ証人がいるからやらないよ」
「いなければやるのか?」
「ご希望とあらば、ね。早く乗ってよ」
オミはエレベータの扉を押さえて振り返った。
元々の性質は知っての通り素直で、今も本質的には変わっていない。
ふざけた言葉遊びに心底面倒くさそうにだが付き合う。
その一方で、行動は止めずにやるべき事を進める。
問題があれば解決案や代替案をいくつか即座に提示する。
上に立つ事も、必要なら誰かの下で従う事も厭わない。
周囲の言動にいつも注意していて、さりげなく気付かれないように手助けをしたりしている。
華族にありがちな、他人の為に動く事に対しての抵抗は無いようだ。
そういえば、カゲミツもヒカルもそうだった。
しかしあいつらはあまり気が利かなかった。
まあ、一人っ子と末っ子ではそんなものか。
なんだかんだで、育ちの良い坊っちゃん連中だ。



オミはマスターと何かしら交渉をしている。
切れ長の眼が一見冷たそうな、と言うより不機嫌な時は冷たいを通り越して冷酷そのものといった印象を与えるくせに、笑うと途端に柔和な雰囲気になるから不思議だ。
といっても、不機嫌な振りはしても本当に不機嫌になる事はあまりない。
むしろよく笑う。
どちらかと言うとくだらない事でも声を上げて笑う笑い上戸だ。
結論から言うと、本当に可愛げがない奴である。
素直にしていればカゲミツの次点くらいで俺の嫁候補に入れてやらんものを。

「何をさっきから百面相してるの?」
「禁則事項です」
「……あっそう」
俺はこの表情を良く知っている。
ヒカルやカゲミツが、マスターの趣味について言及する時の顔だ。
一般的には「軽蔑」という言葉がしっくりくる。
まったく可愛くない。
言っておくが、このネタが理解できる時点でお前も同類だからな。
「マスター、ありがとう。今晩中には返すよ」
おい、その似非爽やかな笑顔を俺に対しても向けてみろ。
「おー、気をつけていけよ」
「大丈夫、行ってきます」

何処へ行くつもりなのかは告げずに、「車」とだけ言って歩き出した。



----------------









|


INDEX
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -